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小倉ロス [社会]

フジテレビの朝の看板番組『とくダネ』が終了し、代わって『めざまし8』が始まりひと月が経った。やはり『とくダネ』の小倉智昭キャスターが恋しい。小倉さんがツッコむ程よい苦味が番組の持ち味だったのだが、新番組は完全にサビ抜きされてしまいどこか物足りない。

tv_camera.png番組名から察するに、『めざましテレビ』を8時以降も綿々と続けるコンセプトなのかと察する。その狙いはある程度達成されているかも知れない。ただ『めざましテレビ』はエンタメ系が中心の軽い作りなので、出演者が内輪ではしゃぐノリでも別に構わないのだが、『とくダネ』や『めざまし8』はシリアスな時事ネタも扱う報道系ワイドショーだ。『めざまし』から『8』に抜擢された永島優美アナは才気あふれるキャスターだと思うが、『めざまし』で確立した彼女の天真爛漫キャラを忠実に演じ続ける熱意が、見ていてときどき痛々しい。

いっそチャンネルを変える手もあるのだが、地上波のワイドショーはどこも目指す着地点はあまり変わらない。あおり運転のドラレコ動画を見て憤り、大谷翔平選手の活躍にエールを贈り、著名人の訃報に頭を垂れる。まずは怒る、ここでは感動する、次は一緒に悲しむ、と視聴者の情緒的反応までお節介にパッケージ化されているようで、いささか鬱陶しい。その点では『とくダネ』も例外ではなかったのだが、メインキャスターでありながら小倉さんが時に番組の予定調和を破壊するような喝を入れるのが、胸のすく思いだったのである。

古市憲寿さんや三浦瑠麗さんといった曲者コメンテーターも、小倉さんのツッコミがあったからこそ生き生きとしていた。お二人は『めざまし8』でも引き続き出演しているが、彼らの変化球を打ち返せる出演者がいないので、せっかくのコメントが宙に浮いたままスルーされる。小倉さんは導火線が短そうなタイプだが、明らかにストライクゾーンから外れた古市さんの曲球を何だかんだ言いつつちゃんと掬い上げる懐の深さがある。永島アナとタッグを組む谷原章介さんは好人物なだけに、変化球に手を出して派手に空振りするよりも、見送って四球で出塁する方を好むようである。

当たり障りのない井戸端会議をテレビで鑑賞しても仕方ないので、ワイドショーの制作側はもう少し攻めるキャスターを引っ張って来てもいいんじゃなかろうか。小倉さんのレベルに到達するにはおそらく相当な経験と引き出しの豊かさが求められるから、簡単に相応しい後任者が見つかるとは思わない。でも、フォアボールか見送り三振しかない野球の試合を見ていても、退屈ではないか。

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