SSブログ

AmazonのCM [その他]

AmazonのCMに、微かな違和感を感じる。

yuubin_takuhaiin_box.png最近よく見るCMは、共働き夫婦の話だ。二人の帰りが遅く、会話の機会もない。店が閉まってしまうので、トイレットペーパーを買うのも一苦労だ。ある日夫が買い物リストを確認していると、若き日の妻が作った「いつでもこの頃に戻れる券」という手書きのチケットを偶然見つける。ふと何かを思いついて、スマホを手にする彼。その夜、夫は職場から出てくる妻を迎え「まだ使える?」と券を差し出す。驚いた妻だが、夫の真意を悟ると笑顔で頷く。久々のデートから帰ると、自宅の玄関前にAmazonのボール箱が届いている。

心温まるストーリーではあるが、どこかしっくり来ない。わざわざサプライズで若かりし日の思い出を持ち出す中年男の乙女チックぶりが、こっ恥ずかしい。もともと夫婦仲は問題なさそうなので良かったが、これを倦怠期にやらかしたら新たな火種になりそうである。しかも、手を握り合って帰宅した二人を待っているのは、トイレットペーパー(か分からないが買い物リストの品)である。Amazonでは日用品も買えますよ、というメッセージを言うだけのために、えらく持って回った物語を用意してきたところが釣り合わない。

むかし、こんなCMもあった。若い夫婦に可愛がられていた大型犬が、夫婦に赤ん坊が生まれてからというもの、家族の輪に入れない。とても大人しい犬だが、子供に泣かれてしまうのである。赤ん坊がライオンのぬいぐるみに夢中になる様子を見ていたパパが、妙案を思い立つ。彼がAmazonで注文したのは、タテガミの被り物だ。ライオンに扮しておずおずと赤ん坊に近づく犬を、子供はやっと受け入れてくれる。

これもちょっとイイ話を狙っているのはわかるが、犬の立場を考えるとやり切れない。この家族の一員であり続けようと、安っぽいタテガミをかぶり、ライオンに成りきる犬。子供のご機嫌を取るためにネコ科のフリに甘んじるイヌの気持ちを、考えたことがあるか?CMに登場するレトリバーの切ない佇まいが名演なだけに、見るたびにモヤっとしていた。

「めっちゃお得」を連発するAmazonのCMもある。お得だから思わずポチッと買ってしまうそれは、本当に欲しかった物なのか?タテガミの被り物も、つまるところその延長にある。飽くなき消費意欲を刺激するためにイイ話を偽装する胡散臭さが、AmazonのCMに感じる違和感の源のような気がする。もちろんトイレットペーパーは必需品なので、買いに行く暇がないならAmazonで注文すればいい。でも、たまにでも週末に時間が取れるなら、近所のスーパーでまとめ買いしておくほうがたぶん「めっちゃお得」である。

共通テーマ:日記・雑感

第5波の現状について [科学・技術]

コロナ第5波はまだ出口の見えていない状況ではあるが、現時点でわかっている国内の特徴を整理してみたい。元データは各種関連サイトを参考にした(日経東洋経済東京都東京モニタリング会議など)。
1.第5波は東京が震源地であったことはおそらく間違いない。7月12日に発令された緊急事態宣言は、東京(と沖縄の宣言延長)だけが対象だった。東京の新規感染者数はお盆前後にピークを迎え、現在では前週をやや下回る減速傾向にある。拡大率(感染者数の一週間前との比)はオリンピックが始まった7月下旬辺りが山場で、8月に入る前後から拡大率は鈍りはじめていた。
2.他の道府県は、東京より数週間ほど遅れて急拡大が目立ち始めた。8月2日になって大阪と首都圏3県に緊急事態宣言が出され、8月20日と27日に相次いでその対象地域が広がった。東京の波が地方に波及したものと思われる。遅れて始まった分、拡大鈍化の訪れも遅い。
3.東京の陽性率は最大24%程度まで上昇していたが、直近では20%まで戻っている。陽性率の時系列カーブは、おおむね陽性者数そのものと連動しているようである。
4.東京都のデルタ株は毎週増加の一途をたどり、8月中旬で90%を超えている。
5.感染者に占める高齢者の割合は第4波以前より顕著に少ないが、40-50代を中心に重症者数が増え、過去最悪の水準に達している。

以前の波は、原因が比較的はっきりしていた。第3波の引き金は、年末にじわじわ広まりつつあったウイルスが年始の家庭内三密で急増したものと思われる。春に大阪で猛威を奮った第4波は、2月末に緊急事態宣言を一抜けした大阪が年度末の送別会シーズンを迎え、感染拡大を誘引したと推察できる。では第5波の感染拡大が東京で先行していたのは何故か?東京は直前の6月20日まで緊急事態宣言下にあった。デルタ株が原因とすれば、そのタネはどこから入ってきたのか?オリンピック前の1-2ヶ月間は、五輪関連業者やメディアを含め少しずつ海外からの人の流入が増えつつあったと思われるので、一定のリスクはあった。そう言えば南米のラムダ株は、オリンピック関係者が日本に持ち込んだという話だった。

数学的には、デルタ株が大勢を占めれた時点で感染拡大率は高値安定するはずである。だが、東京では明らかに拡大率が減り始めている。何故か?本当は拡大が続いているのに検査が追いついていない可能性はある。実際のところ見えていない感染者は多いと思うが、直近で陽性率が下がり始めたことを考えれば、東京の感染拡大は(少なくとも短期的には)実際に減速していることは間違いないように思える。お盆週に都内から人流が減ったことを指摘する人もいるが、拡大減速は8月初旬から既に始まっていた。あと1、2週間で全国的な感染拡大も同じように減速に向かうのか、注目したい。

saigai_kyumei_boat.png高齢者の感染が減っているのは、明らかにワクチン効果だ。デルタ株のブレイクスルー感染が指摘されているが、ワクチンの重症化予防効果はデルタ株にも効くという見解が一般的のようである。より若い世代にもワクチン接種がゆきわたれば、将来的には重症者数は抑えられると期待される。若者がワクチンに消極的と言われるが、渋谷の予約不要の接種会場では大行列ができた。

ワクチンが怖いという人は、沈没する船から救命ボートに飛び移るとき、足が滑ったらどうしようと尻込みするのに似ている。ボートの脇で海に落ちても、たぶんすぐに誰かが助けてくれる。しかし飛び移る勇気が出ないまま沈みゆく船と運命を共にするなら、その限りではない。

共通テーマ:日記・雑感

英国の社会実験 [政治・経済]

英国で、各種大規模イベントを舞台にした大掛かりな感染リスク調査が行われてきた。参加者には、ワクチン接種の完了か直近の陰性証明の提示などの条件が課される。その代わり、基本的にマスクの義務も入場者数の制限もない。調査結果をまとめた英国政府の記者発表をwww上で見ることができる(ここ)。

F1グランプリには3日間で35万人の観衆が参加した。追跡調査でイベント参加者から585人の感染が確認され、そのうち343人はイベント時点ですでにウイルスに罹っていたと思われ、残る242人がイベント中に感染したとされる(症状発生日の聞き取り調査などをもとに判断しているようである)。同じ期間通算のイギリス国内の陽性率は1%台だったことを鑑みると、低い水準に留まっている。一方ウィンブルドンには2週間で通算30万人が集結し、881人の陽性が明らかになった(うち582人がイベント中に感染)。こちらも全国平均の陽性率と比べ低めの数値で、イベントそのものが感染拡大を後押しした痕跡はない。

soccer_stadium.png様相が異なるのがサッカーのユーロ2020だ。イングランドとイタリアが対戦する決勝戦がロンドン郊外で開催され、地元はとりわけ盛り上がった。スタジアムの中だけではなく、試合前後にスタジアム周辺の通りやパブに押し寄せるサポーターの熱気は、F1やテニスの比ではない。その結果トーナメントを通じて合計9,000人を超える感染者が確認され、決勝戦だけで3,400人を超える新規感染者を出したとされる。政府見解としては、ユーロ2020のような特殊例を反省材料とした上で、基本的にはワクチンや陰性確認を前提として大規模イベントを安全に開催することは可能という結論のようである。メディアでは政府より慎重なトーンの分析も見られる(例えばガーディアン紙)。ちなみにユーロ2020の決勝戦はイタリアが征したが、仮にイングランドが優勝していたら、はっちゃけ過ぎて感染者数は9,000人では済まなかったかも知れない。現地の人々にとっては、負けて良かったのか悪かったのか微妙なところだ。

日本でも昨年、Jリーグやプロ野球の会場でマスク着用率などを調べる社会実験をやっていた。だがこれは対策の有効性を試すもので、感染実態を確認する(感染者数を追跡する)ところまで踏み込んでいない。折しも感染者数・重傷者数ともに過去最悪を記録する第5波のさなか、フジロックのように感染対策を取りながら敢行したイベントもある。イギリスの実証実験のように、フジロック参加者の事後検査や聞き取りなど追跡調査を組織的に行えば、現時点での感染リスクやワクチンの有効性を実証する絶好の機会だったのではないか。

そういった調査は国が主導して行うのが筋と思うが、残念ながら科学的なデータを突き合わせて政策立案の礎とする合理的思考が日本政府にはない。しかし、緊急事態宣言を出したり引っ込めたりする生活を、永遠に続けるわけにはいかないのである。下がり続ける内閣支持率のグラフなんかより、パンデミックの出口に向けて私たちが今どこにいるのか、客観的にわかるデータが見たい。

共通テーマ:日記・雑感

ベリー、ベリー、ケアフル [海外文化]

sport_baseball_bat.pngタイガース・エンジェルス戦で打席に立った大谷翔平選手を評し、テレビ解説を努めたジャック・モリス氏が「Be very, very careful」と呟いて炎上した。モリス氏はかつてタイガースで活躍した往年の名ピッチャーであり、「ここはとてもとても慎重に投げないと」と打者大谷の実力を高く評価するコメントである。非難を浴びた理由は発言そのものではなく、その口ぶりにある。アジア系の訛りを真似たことがアジア人蔑視と見做され、モリス氏の地元局出演は無期限停止処分となった。

ビリー・アイリッシュさんが似たような動画流出で謝罪に追い込まれた案件が、記憶に新しい。コロナ関連でアジア系差別が増加している背景もあるのか、英語の訛りを揶揄することはマイノリティを見下すタブーという認識が定着しているようだ。言葉をからかわれ辛い思春期を過ごしたアジア系米国人は、確かに不愉快な思いをしたも知れない。やらなくても良いことをやってしまった失態であることに変わりはないが、「ベリー、ベリー、ケアフル」一言で番組降板を宣告されるとは、なかなか手厳しい。

ところでこの話を聞いたときに浮かんだ素朴な疑問は、一般アメリカ人が「日本人の」訛りを本当に再現できるのか、ということだ。今もやっているか知らないが、大谷選手がエンジェルスで活躍し始めた頃、メジャーリーグの解説者がよく「オータニ・サーン!」と叫んでいた。日本の野球中継で、選手を「さん」付けで呼ぶことはまずない。「おれ、ちょっと日本の習慣とか知ってるぜ」的な無邪気さがスベっているのである。たぶん、アジア人はみな出会い頭に合掌一礼していると思っているタイプではないか。彼らに日系と中国系と韓国系の英語訛りを判別できるとは思えない。

そこでモリス氏の問題発言を実際に聞くと、どうもインド系英語を模倣している気配がある。米国のインド系移民は数が多いので彼らの英語を耳にする機会が多い上、アクセントが特徴的なので真似されやすい。イントネーションが平板な日本語訛りとは、明らかに違う。無粋な物真似をやる以前の問題として、アジア系を一緒くたに括ってスルーでいいのか?モリス氏の失態を批判的に伝える意識高い系メディアも、アジア言語間の違いを検知できていない点では五十歩百歩である。彼らにとっては、オータニサンの祖国が東アジアなのか南アジアなのか、たぶんどうでも良いのではないか。アジアの言語学的多様性に関する無知の方が、「ベリー、ベリー、ケアフル」より根深い文化的偏見のような気がする。

ちなみに本件について訊かれた大谷選手ご本人は、「(問題の場面は)動画で聞いたが(モリス氏の)処分について自分が言うところではないし、個人的には気にしていない、影響力のある方なので難しいところがあるのかなと思う」と答えた。相変わらずソツのない紳士である。

共通テーマ:日記・雑感

日本人には敷居の高い地名 [語学]

先日マツコ&有吉の番組を見ていたら、口に出して行ってみたい言葉の一つに「スリジャヤワルダナプラコッテ」が登場した。1985年にコロンボから遷都されたスリランカの首都である。高校の頃、地理の先生が「スリランカの首都は、もうコロンボではありません。スリジャヤワルダナプラコッテです」と口酸っぱく教えてくれた。当時は遷都からまだ数年後で、旬の時事ネタだったせいかもしれない。生徒の反応は「え?スリジア何?」という具合で、「では10回復唱しましょう。はい、スリジャヤワルダナプラコッテ、スリジャヤワルダナプラコッテ・・・」と特訓が始まった。おかげであれから30年以上たった今なお、私はスリジャヤワルダナプラコッテを一切噛まずに暗唱できる。

外務省のサイトによると、正式には「スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ」と区切るようである。もし意外な区切りの地名コンテストがあるなら、その頂点を極めるのはアフリカ最高峰キリマンジャロではないか。キリマン・ジャロでも、キリ・マンジャロでもない。「キリマ・ンジャロ」が正しい。現地の言葉で輝ける山という意味だそうだ。アフリカの言葉や人名が「ン」で始まることは珍しくない。その実例をいくつか覚えておけば、しりとりの禁じ手「んで終わる語」から奇跡の復活を遂げる秘密兵器に使えるかもしれない。

南太平洋に浮かぶ島国バヌアツにErromangoなる島があり、迷える子羊たちの耳にはこれが「エロ漫画」に聞こえるそうである。もっとも、格式正しきブリタニカによれば「Eromanga」とも綴ると明記されており、素直にローマ字読みすれば紛れもなくエロマンガだ。一説によると、島を訪れたクック船長に住民がヤムイモを提供したとき、現地語で「美味しい食べ物」を意味する言葉を島の名前と勘違いしたのがErromangoの語源ということである。

dinosaur_quetzalcoatlus.pngさらに謎めいていることに、オーストラリア中部クイーンズランド州にもEromangaという地名が存在する。こちらは「熱風吹きすさぶ土地」を意味するアボリジニ語に由来すると考えられているそうで、地理的・言語学的な隔たりから考えてバヌアツの同名の島と関連があるとは思えない。エロマンガ盆地という広大な大地があり、中生代に形成された地層が眠る。ここで見つかった巨大な翼竜の化石が、つい最近ニュースになった。太古の生物に何ら関心もなかったであろうネット民たちが、「エロマンガ内海を飛んでいた巨大翼竜発見」という破壊力全開の見出しにざわついたようである。

少し前にも、エロマンガ盆地で見つかった世界最大級の竜脚類の化石が、ティタノサウルスの新種と判明したばかりだ。ちなみに『メカゴジラの逆襲』に登場する怪獣チタノザウルスは、ティタノサウルスと綴りは全く同じだがもちろん赤の他人だ。エロマンガにせよティタノサウルスにせよ、エキゾチックな固有名詞が文化圏を超えて偶然に一致することは、意外に珍しくないようである。

共通テーマ:日記・雑感

アルファ株とデルタ株 [科学・技術]

第5波が猛威を振るう今、ラスボス感満載のデルタ株が幅を利かせている。その話に入る前に、春先のアルファ株の動向を振り返っておきたい。いまやすっかり忘れられているが、デルタ株(旧インド株)が変異株のセンターを奪うまでは、アルファ株(旧英国株)がコロナ最強のヒールとして脚光を浴びていた。昨年末くらいからイギリスを中心に騒がれ始め、感染力が従来株より3割強いと言われる。

COVID-variants.jpg東京都モニタリング会議(第58回)の資料に、興味深いデータが示されている。変異株が占める割合の推移を示すグラフだ(ところどころ原図に注釈を入れてある)。アルファ株とデルタ株それぞれについて、都内の遺伝子解析で陽性が初めて確認された週を起点とした時系列になっている。破線のアルファ株に着目すると、第1週(今年の1月11-16日)から10週間にわたり床を這うように低値安定だったが、11週目から突然上昇し20週目には90%近くに至った。11週目は3月下旬にあたり、第4波が大阪で猛威を奮い始めた時期と一致する。大阪から持ち込まれたアルファ株が起爆剤になったのかも知れない。

ここで2つの疑問が生じる。なぜ東京都のアルファ株は、発見後2ヶ月以上ものあいだ潜伏したまま拡がらなかったのか?そしてなぜ東京の第4波は、アルファ株の置き代わりが進んだにもかかわらず大阪に比べて「不発」に終わったのか?要は、アルファ株は前評判ほどのワルではなかった、ということではないか。従来株よりいくらかでも感染力が強ければ、感染拡大の局面では変異株が従来株に置き換わっていくのは数学的に自明だ。だがそれは必ずしも、変異株が感染拡大の主要因であったことを意味しない。東京の動向に関しては、データから判断する限りアルファ株が大半を占めるようになったのは緩やかな第4波の結果に過ぎず、アルファ株に深刻な急拡大をもたらすほどの威力があったとは言い難い。

さてデルタ株は、アルファ株の1.5倍、従来株の2倍の感染力と言われる。上図によれば、都内で存在が確認されたのち速やかに置き換わりが進んでいる。第5波の兆候が始まった6月下旬に先立ち顕著な上昇が始まり、直近で80%強に達している。この間、新規感染者数そのものだけでなくその増加率も緩やかに上昇しているので、デルタ株が積極的に感染拡大を加速させていると解釈しても矛盾はない。基本的に受け身であったアルファ株とはだいぶ様相が違うようである。アルファ株のときはメディアや「専門家」の前のめりなメッセージに少し不信感があったが、デルタ株はブレイクスルー感染の話も含め、確かに面倒臭そうなヤツではある。

もし人流が変わらないなら、変異株の占有率が100%に達した以降は、理屈の上では増加率の上昇は止まる(感染者数そのものは増え続ける)。手元で東京の疫学データを見ているが、たしかに五輪が始まった7月末辺りから増加率が頭打ちになっている気配もある。ただもう少し動向を見続けないと結論は出せないので、これについては機会を改めて考えたい。

共通テーマ:日記・雑感

祭りのあと [社会]

medal_medal.pngオリンピックが閉幕した。小ネタをまとめておく。

名古屋市の河村市長が、表敬訪問に訪れたソフトボール代表選手の金メダルを噛んで見せるまさかのパフォーマンスで、総スカンを喰らった。選手へのリスペクトを欠くとか、感染対策意識が低すぎるとか、いろいろな批判がある。それはそのとおりだが、コロナやメダル以前に人様の持ち物に噛み付く感性がおかしい。この人ならやりかねないと思わせるところが、余計に残念である。

名古屋市民の一人として、市長選で河村氏に投票した人たちには猛省を求めたい。次から選挙は、入札のように調達仕様書を定めて告示するほうが良いのではないか。市長にふさわしい資質として、必要最低限の項目をリストアップしておく。「他人のメダルをかじらない人」もその一つだ。条件を満たさない人は、立候補の資格を得られない。首相の仕様書には、「だいじなスピーチで原稿を読み飛ばさない人」は必須か。もっとも、総理大臣は選挙で選ばれるわけではないが。

五輪関係者のスクリーニング検査で陽性率は0.02%程度の低い数値だったと、組織委員会が胸を張っていた。それはそれで良いのだが、20%を超えた都内の検査陽性率と比較する報道があったりして、解釈が混乱している。もちろん、母数の意味が違うので比べても仕方がない。0.02%は対象者全体に対する割合だが、東京の20%はごく限定的な検査数のなかで見えている比率に過ぎない。ちなみに東京都の人口1400万人全体に対し、0.02%は2800人に相当する。東京都の新規陽性者数が2800人を初めて超えたのは、奇しくもオリンピック開会式の週末開けにあたる先月27日だ。オリンピックの開幕とともに、五輪バブルの中と外で感染率が逆転したことになる。だから何だということではないが、ちょっと象徴的だ。もっとも、仮に全都民がPCR検査を受けることができたら、実際の感染者数は数千人どころでは済まないかもしれない。

日本のコンビニにすっかりハマってしまった海外参加者が続出したそうだ。そりゃそうだろう。弁当にせよスイーツにせよ、クオリティもバラエティも日本のコンビニの水準に匹敵する業態は世界広しといえ他に存在しない。そもそも、日本のようなコンビニ文化そのものが存在しない国のほうが圧倒的に多い。大手コンビニの草分けセブンイレブンはもともとアメリカ資本だが、アメリカのセブンイレブンには弁当もスイーツもない(乾き物のスナックは山ほどある)。アメリカでは基本的に、ガソリンスタンド併設の購買部にセブンイレブンを見かけることが多い。米国出張中に日本人の同僚が、現地のセブンイレブンで朝食のサンドイッチを買ってくるのを見かけたことがあるが、残念なチョイスだ。日本のコンビニで買えるサンドイッチの質を期待すると、かなりがっかりする。アメリカで安くまともな朝食を食べたいなら、ベーグルをトーストしてもらうのがいい。私は米国出張に行った時は必ず、ホテル近くでベーグルが買えるカフェをネットでチェックする。

オリンピックは見ていて楽しかったが、ふと気がつくと(五輪のせいかどうかは別にして)前代未聞の感染者数である。祭りのあと誰もいなくなった目抜き通りに、紙吹雪が散らかったまま旋風に舞っている。みんなでコツコツと後片付けをしよう。

共通テーマ:日記・雑感

芸能人の離婚案件 [社会]

rikon_todoke.pngコロナとオリンピックの陰で地味に流通しているニュースの一つが、大物芸能人に相次いだ熟年離婚である。とくに世間を驚かせたのが、鈴木保奈美さんと石橋貴明さん、篠原涼子さんと市村正親さんの二組だ。どちらも円満な協議離婚ということだが、芸能ニュースの受け止め方にはかなり温度差があるようである。

鈴木保奈美さんは子育てが一段落し、亭主関白で妻の女優活動にあまりいい顔をしない(とされる)石橋さんを見限った、というシナリオが通説だ。一方、篠原涼子さんはお子さんたちがまだ独立には早い年頃で、親権が市村さんに委ねられたことから、母親より女優業を選ぶのかと批判する向きもあった(もし男女の立場が逆だったら、父親より俳優業を取るのかと非難する声はほとんど出ないだろう)。風向きが不穏だと思っていたら案の定、芸能メディアは韓流スターとの関係とかあれこれ掘り起こし、篠原さんを叩き始めた。鈴木さんはOK路線で篠原さんはNG案件、と仕分けすることに決めたようである。

メディア相手の情報戦の中で、鈴木保奈美さんの出方は鮮やかだった。束縛の強い夫から放たれる構図を醸成しつつ石橋さんと仕事上の関係は続くと強調することで、ダメージを最小限に抑えた頃合いが見事である。篠原さんと市村さんの方は、歳の離れた夫が醸し出す大人の余裕を印象付けて円満演出を試みたが、これが却って篠原さんを悪役に仕立てている感もある。芸能メディアは、夫が立派なのだから離婚は妻のせいだ、というシンプルな二元論で整理してしまいたいのである。

誰かが離婚するとその原因があれこれ詮索されるが、つまるところ単に夫婦を続ける理由がないだけの場合もある。もともと赤の他人どうしだった二人が、ひとつ屋根の下で何十年も暮らすのである。お伽噺のように「二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」を実現するのは、並大抵のことではない。ほとんど喧嘩もせず老後まで仲睦まじく寄り添う夫婦がいる一方、単に離婚に踏み切るのが億劫で持ち堪えているケースも珍しくはない。仲が冷えても最後は同志に立ち返って共感し合える余地があれば良いが、共感回路が完全に焼き切れると夫婦間はただ敵対する場となり、もはや関係悪化を止めることはできない。

引き合う2本の棒磁石の向きを変えると逆に跳ね返るように、夫婦間の引力が斥力に変わる局面がある。その瞬間は、子供の養育や経済的自立のような目に見える問題と違って、他人が窺い知ることは難しい。どちらがN極か書かれていない棒磁石の動きを観察するようなものだ。他人どころか、当事者にも磁極の反転が見えていないことがよくある。石橋さんや市村さんにも言い分があるに違いないが、もしかすると妻の本気度に気付くのが少し遅すぎたのかも知れない。

共通テーマ:日記・雑感

ワクチン報告 [その他]

今週日曜日の朝、かかりつけのクリニックで新型コロナワクチンの接種2回目を受けてきた。ファイザー製である。Pfizerはアメリカの製薬会社だが創業者はドイツ系で、pとfが連続する綴りはドイツ語の特徴である。むかし第二外国語の授業で「pf」はpとfを同時に発音すると習ったが、どうすればそんな芸当ができるのか未だにわからない。

sick_vaccine.png3週間前に受けた1回目のときは、接種部位が少し腫れて腕を動かすとちょっと痛んだが、翌日には腫れも引いて何事もなく終わった。2回目は発熱や頭痛など副反応がキツいと聞いていたので、翌日は予めテレワークを入れ、いざとなればすぐに寝込む体制を整えておいた。副反応対応の頭痛薬としては、抗炎症作用の弱いカロナールを良しとする意見もあるようだが、普段から頭痛持ちの身としては効きの弱いカロナールには不信感がある。いろいろ調べると飲み慣れた薬でOKという見解が多いようなので、枕元には常備薬のロキソニンと飲み物をセット。あとは来るなら来いと覚悟あるのみで、当日朝は武者震いの心境でクリニックに向かった。

かかりつけ医はとても良い先生だ。研究者の職業病で知りたいことは何でも訊きたくなるのだが、面倒くさい患者の疑問にいつも笑顔で正直ベースに答えてくれる。二回目の副反応がキツい背景について聞こうと思ったら、「そう言われるんですけど、二回目のほうが楽だったっていう方も、結構いらっしゃいますよ」と意外な回答で切り返された。そんなもんか?

接種後しばらして上腕の接種部位が腫れてきたのは、一回目と同じだ。腕を持ち上げると少し痛むが、じっとしていれば何ともない。接種当日は何事もなく終わったが、24時間くらい経って発熱する人が多いようなので、万全の就寝で翌日に備える。翌朝目覚めたところとくに異常はなく、普通に朝食を取って在宅勤務を開始。こまめに体温をチェックしていたところ、接種23時間目くらいで37.0度に上昇、そう言われてみると若干だるいし、かすかに頭痛もする(気がする)。ついに来たかと張り切ってロキソニンを服用、来たるべき悪寒に備え心を整える。だがしばらく待ってみても、とくに症状が悪化する気配もない。38度超を覚悟して再び体温を測ると、なんと36度台に逆戻りしている。様子を見続けたが結局待ち人来たらず、その後発熱も頭痛も悪寒もないまま二日目の夜が来た。その翌日(今日)は腕の腫れも引き、経過観察終了。大山鳴動してネズミの一匹すら現れず、結局クリニックの先生の言うとおりだった。

副反応の調査結果を見ると、ファイザーワクチンの2回目で全身症状が出る確率は倦怠感が3分の2くらい、頭痛が5割くらい、発熱は40-50代では3-4割程度のようである(厚労省公開のデータ)。キツい副反応の体験談を聞くと鮮烈な記憶として残るので、ワクチンを打った人は皆苦しみを乗り越えてきたような印象が脳裏に刻まれる。楽に乗り切ったせいで裏切り者になったような後ろめたさすら感じていたが、統計上は副反応がなくてむしろ普通ということである。

厚労省公開データによれば、モデルナ製のほうは8割程度の人に倦怠感や発熱が報告されているようで、大規模接種や職域接種の人のほうが副反応は出やすいのかも知れない。ただこのモデルナ調査は自衛隊員が対象だったそうで、若くて健康な人が多い統計バイアスも少しあるもしれない。いずれにせよ、同じものを体内に入れても人によってかくも反応が違うのは、人体の不思議と言うべきか。オリンピック中のせいか多様性云々という説教をよく耳にするが、同じ人種・同じ家族のなかですら人間はかくも多様に造られている事実は、ちょっと神秘的ではないか。

共通テーマ:日記・雑感