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新装開店 [社会]

nan_curry.png最低でも月一でお世話になっていた近所のインド料理店が、今年六月に閉店した。長年のファンとして、気を失いそうなほどショックを受けたことは言うまでもない。二年以上にわたりコロナ禍を耐え抜いたのにと残念でならないが、自治体からの協力金支援が終了したことが裏目に出たのか、単にオーナーの個人的な事情なのか、真相は定かでない。

最後に足を運んだ際に淋しいですねと店長に訴えると、「厨房スタッフはいずれ別のお店で働くかもしれませんよ」と謎めいた返答を得た。店の斜向かいの格安スーパーにいつも閑古鳥が鳴いているフードコートがあって、その片隅に別のインドカレー店が入っているので、そこに再就職するのだろうかと思った。小さな店舗には多すぎるインド人シェフが所狭しと肩を寄せ合い、来ない客を待って暇を弄ぶさまが思わず目に浮かんだ。閑静な住宅街の一角という立地を考えると、固定客がつかない限りビジネスはなかなか成立しないのではと思う。

この格安スーパーは普段ほとんど訪れることはないが、ごくたまに特売品目当てに買い物に行くことがある。つい先日、大安売りのネスカフェゴールドブレンドをチラシで見つけ、久々にこのエリアにやって来た。例のインド料理店があった場所に車で近づくと、遠目に何台もの車が駐車場に停まっていることに気が付いた。もう誰かが同じ場所で新しいビジネスを始めたのかと、興味津々で車を寄せた。その店構えが目に入った瞬間、驚愕に言葉を失い、次いで爆笑した。

閉店から二カ月と絶たないインド料理店の跡地に出現したのは、何と別のインドカレー店であった。壁のペンキと看板を塗り直した形跡を除けば、旧店舗の外観がほぼそのまま残っていた。

撤退した店舗を同業他社が買い取るのは、珍しいことではない。コンビニの後に別のコンビニ、ファミレスの後に別のファミレス、そしてインドカレー店の後に別のインドカレー店。既存設備を使い回せるから初期投資が節約できるし、職を失ったシェフをそのまま引き抜ける。入れ替わりの早さから察するに、旧店舗が閉じるずいぶん前から両者の間で話が付いていたことは疑いない。「厨房スタッフは別の店で働くかもしれませんよ」の真意がわかった気がした。

旧店に馴染んだ客が次々と偵察に来るので集客効率は良いと思うが、どうしても味やサービスを比較されてしまう怖さがある。ネットでは早速旧店の常連が体験談を書き込んでいて、新店舗は何とも言えない微妙な評価だ。長年のファンは思い入れが強いので、自ずと見る目が厳しい。新店の健闘を祈る。

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