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円安はどこまで [政治・経済]

money_weak_yen.png一ドル150円をあっけなく突破した。バブル末期以来32年ぶりの円安ということである。折しも水際対策が大幅に緩和されたところで、インバウンド需要に期待する向きもあるようである。コロナ禍に苦しんだ旅行業界が潤うのは良いのだが、だから円安も悪くないと開き直るのも少し浅はかだ。国内で生み出される価値が軒並み目減りする円安が、中長期的に見て日本にとって良いわけがない。

アメリカが急激なインフレ対策で利上げを進める一方、日本の金融政策は頑なにゼロ金利に固執する。このギャップが投資家の円離れを加速し、円安に歯止めがかからないとされる。しかもウクライナ情勢の余波と脱コロナ需要の増加で物価がじわじわ上がっている。何とかならんのかと誰もが思う中、肝心の政府は根本治療には程遠いバラまき政策しか思いつかないようだ。一体どうなっているのか。

数週間前、欧州と米国を出張で周ってきた。アメリカは確かに幾らか物価は上がっているかもしれないが、日本のニュースで騒がれている程でもない。ニューヨークとかハワイばかりで取材すれば物がやたら高いのは当たり前で、ふつうの地方都市で安めの店を選べば10ドル少々でいくらでも食事はできる。以前と一番違うと思ったのは、ホームレスの人たちが増えたことである。好況に湧くアメリカに比べて一向に給料の上がらない日本、と半ば自虐的なトーンで円安の背景が語られることも多いが、米国の街角を彷徨うホームレスの姿を見る限りどの国も闇を抱えている。脱コロナに向けて突進する社会は、成長の潤いと格差の痛みを同時に産み出す。そんな矛盾を承知の上で、とにかく前に進もうとするエネルギーがアメリカ経済の昨今の勢いを支えてきたのだろうかと思った。

ひるがえって日本の経済は、どこを目指しているのか?実効性のある政策は大抵リスクを伴うから、覚悟を据えなければ結局何も始まらない。日本の為政者が結果責任を恐れて手を打ちあぐねる限り、円安と物価高はいつまで経っても解決しないのではないか。

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