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マルハラ [社会]

computer_message_app.pngZ世代の子たちは、LINEで送られてきた文章が「。」で終わっていると恐怖を覚えるのだという。マル・ハラスメント略してマルハラという言葉まであるそうだ。旧世代には想像のつかない心理だが、何がそんなに怖いのか? 日本語に句読点が導入された明治時代以来、「。」をくらって絶命した犠牲者は一人もいないはずだ。

そもそも「。」がなければ文章が区切れないから読みにくい、と私たち旧世代は考える。しかし若い子たちは、そもそもLINEで長文を打たない。短い言葉やスタンプをこまめに送信するので、文章を区切る必要がない。必要がないところに敢えて「。」をぶっこんでくると、逆に背後の意図を感じてしまう。スタンプや絵文字と違って感情を伝える機能を持たない「。」は、その無機質さゆえに静かな拒絶や冷たい怒りを表しているように見える。というのが彼らの恐怖の深層のようである。

若者たちもレポートや社内文書などで堅い文章を書くときは当然「。」を使うに違いない。一方で内輪のコミュニケーションで使う言葉は標準的な日本語とは別の言語へと進化を始め、彼らは器用にそれを使い分けているのだ。若者のスラングが上の世代に理解できないのは時代を問わず世の常だが、句読点の省略のような文章表現の基盤をも揺るがすレベルの変容は、あまり聞いたことがない。

かつて日本語は文語体が口語体からかけ離れていた時代があったが、明治の文豪たちが言文一致運動を起こして現在の文体に統一された。ところが今、Z世代はスマホ上のコミュニケーションに特化した「超口語体」を使いこなし、日本語の新体系を生み出そうとしている。2020年代は明治の言文一致に匹敵する日本語の変革期だった、と未来の言語学者が宣言する日が来るかもしれない。

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