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一平さんの事件 その4 [スポーツ]

水原一平さんの事件が急に動いた。連邦検事の会見が行われ、水原さんが大谷選手を騙って銀行を欺こうとした電話記録とか、胴元との生々しいテキストメッセージの応酬とか、いろいろ闇の深い話が出てきた。何よりも、大谷口座から不正に出金された総額が1600万ドルとされ、今まで出ていた話からさらに数倍グレードアップした。庶民感覚ではもはや何のことやら訳がわからない。

白黒がハッキリしたのは前進だが、被害額が膨れ上がっただけに、大谷選手が一度たりとも異変に気付かなかった事件の特殊性はかえって際立った。水原さんがオオタニ口座の連絡先を自分宛に変えていた痕跡があるそうだ。普通そういう時は、あなた設定変えましたかという確認メールが元の(大谷選手の)アドレスに届く不正抑止措置がある。それに、正常な取引のアラートもある日を境にピタリと届かなくなれば、何かを疑うきっかけになっただろう。大谷選手にとって、銀行からの通知はもともと何の意味もなかったようである。

訴状によれば、大谷選手には専属の資産管理チームがいたが、水原さんは大谷選手の意向と称して彼らがオオタニ口座へアクセスするのを阻止していたそうである。資産管理担当者がクライアントの口座を見られないなんて、プロとして悲しくないのか。彼らの誰も、水原さんを怪しいと思わなかったのだろうか?

実はこういうことだったんじゃないかと最近思っていた一つの仮説がある。

gamble_chuudoku_izonsyou.pngギャンブルの損失に困った水原さんが、ある日ふと魔が差してオオタニ口座におそるおそる手を付けた。次の賭けに勝ったらこっそり埋め合わせておけばいい、と最初は思っていた。その時はまだ少額で、本人を騙って銀行を煙に巻くのも不可能ではなかった。だがあれよあれよと負けがかさみ、負債はみるみる隠しきれない規模に達した。万事窮した水原さんは、洗いざらい大谷選手に打ち明けた。大谷選手は当然ムッとしただろうが、見るに見かねて手を差し伸べることにし、白紙小切手委任の状態を事実上黙認した。その結果、送金に大谷選手は関与しない傍ら、もう賭けはやらないと改心したはずの水原さんに歯止めが利かなくなった。ギャンブル依存症の彼にとって、アルコール依存症患者が酒蔵の鍵を預けられるようなものだったわけである。

というのはもちろん単なる妄想だ。ただ、水原さんの二転三転した証言に説明がつくし、イッペイは本当に信用できるかと資産管理チームに問われた(としても不思議のない)大谷選手が事を荒立てなかった背景も理解できる。大谷選手のスマホに不審な記録が残っていなかった捜査結果とも矛盾はない(常に行動を共にしていたかつての二人の関係なら、電話など不要だったはずだ)。そして、今年2月ドジャーズのイベントで大谷選手が水原さんを「友達ではない、割り切って付き合っている」と言った発言の真意も想像がつく。

水原さんは数年にわたり不正送金を隠し通せるほど計画的犯罪の素質があるようには見えなかったし、大谷選手が足元で数十億円相当の預金が消えていくことにまるで気が付かないほどウブだとも思っていなかった。大谷選手自身が自己資産に無関心だったとしても、それを代わりに管理すべきプロ集団がギャンブル狂の一通訳にコロリと騙されるとも思わなかった。でも、落としどころはそういうことだったようである。事実は小説より奇なりということなのか、呆れるほど単純だったと言うべきなのか。

(大谷選手の金を)勝手に使い込んだわけではないんだろ、と念を押す胴元に対し、水原さんはこう答えたという。
Technically I did steal from him. It’s all over for me.
厳密な意味では、盗みだったんだ。もう何もかもおしまいだ。
彼は「Technically」と前置きすることで、何を仄めかしたかったのか? そこを誰かに聞いてみたい。

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