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それ、逆です [その他]

美術館の名画に缶詰の中身をぶちまけるクレイジーな環境活動家があちこちに出没している。展示中の絵画は大抵ガラスで保護されているので幸い本体は損傷は免れているが、当人たちは唯一無二の芸術作品をかけがえのない地球にたとえて世間を挑発しているつもりのようである。

bijutsu_art_paint.png彼らは決まってゴッホやフェルメールなどの定番の名作をターゲットにする。衆目を集めるには誰もが知る名画を狙うのが近道かもしれないが、環境破壊反対のメッセージとしてはいささか知恵が浅い。地球環境問題を意識する難しさは、身の回りで起こっていることが地球全体に及ぼす影響を想像しづらい無自覚性にある。どうせ狼藉を働くなら、トマト缶をぶちまけても汚損なのか芸術の一部かわからない前衛作品を選んでみてはどうか(決して煽っているわけではない)。傍目にわかりづらいが実は大変な損害が起きている、という意味でより相応しいメタファーのはずだ。

モンドリアンのとある作品が77年間にわたり上下逆に展示されていたのではという疑惑が話題を呼んでいる。縦横の線をモチーフにした幾何学的な作風で知られる画家だけに、素人目にはどちら側が上でも下でも違和感がない。気付いた学芸員もすごいが、四分の三世紀にわたり気付かれずにいた絵画自身も相当なものである。ひっくり返ったまま70年以上人々の目を楽しませてきたのなら、それはそれで「正しかった」のではという気もする。

一方、77年間も地球温暖化対策を放置したらきっと取り返しのつかないことになりそうだ。地球環境問題になぞらえるには、芸術はあまりに多様で奥が深い。

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