SSブログ

番外編:「民度」を訳せるか [語学]

麻生財務相の発言がまた物議を醸している。日本のコロナ死亡率が低い理由を問われて「おたくとうちの国とは、国民の民度のレベルが違うんだ」と持論を展開したらしい。その分析力の稚拙さはさておき、「民度」の意味が外国の人にうまく伝わっただろうか?麻生氏が英語で喋ったのか通訳がついていたのか詳しい状況は不明だが、民度を何と訳したのかちょっと興味をそそられる。もしくは相手が日本語に堪能だったのかもしれないが、民度という日常あまり使われない言葉を正確に理解している非ネイティブ日本語話者は少ないのではないか。麻生大臣によれば相手は皆絶句したとのことだが、単に「ミンド」の意味がピンと来ず、答えようがなかっただけかも知れない。

shinbun_newspaper_english.pngこの一件を伝える英文メディアも、民度の訳し方に苦心しているようである。ざっと見る限り、the level of social manners(共同通信)、cultural standards(テレグラフジャパンタイムズ)、または直訳調でthe level of people(朝日新聞)など様々だ。確かにこれで辞書的な意味はわかるが、この言葉が時に孕む差別的なニュアンスを語らなければ、なぜ麻生節が国内で批判されたのか理解されないのではないか。

都知事時代の石原慎太郎氏が、某近隣国を指して「民度が低い」と放言したことを思い出した。その物言いに侮蔑的な匂いを感じなかった人はいないだろう。言葉自体に本来棘はないと思うが、その一言を吐き捨てる人の思考回路が短絡的だと、たちまち語感が品位を失う。民度という言葉は、それを使う本人の民度が露呈するリトマス紙である。

共通テーマ:日記・雑感