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日本人には敷居の高い地名 [語学]

先日マツコ&有吉の番組を見ていたら、口に出して行ってみたい言葉の一つに「スリジャヤワルダナプラコッテ」が登場した。1985年にコロンボから遷都されたスリランカの首都である。高校の頃、地理の先生が「スリランカの首都は、もうコロンボではありません。スリジャヤワルダナプラコッテです」と口酸っぱく教えてくれた。当時は遷都からまだ数年後で、旬の時事ネタだったせいかもしれない。生徒の反応は「え?スリジア何?」という具合で、「では10回復唱しましょう。はい、スリジャヤワルダナプラコッテ、スリジャヤワルダナプラコッテ・・・」と特訓が始まった。おかげであれから30年以上たった今なお、私はスリジャヤワルダナプラコッテを一切噛まずに暗唱できる。

外務省のサイトによると、正式には「スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ」と区切るようである。もし意外な区切りの地名コンテストがあるなら、その頂点を極めるのはアフリカ最高峰キリマンジャロではないか。キリマン・ジャロでも、キリ・マンジャロでもない。「キリマ・ンジャロ」が正しい。現地の言葉で輝ける山という意味だそうだ。アフリカの言葉や人名が「ン」で始まることは珍しくない。その実例をいくつか覚えておけば、しりとりの禁じ手「んで終わる語」から奇跡の復活を遂げる秘密兵器に使えるかもしれない。

南太平洋に浮かぶ島国バヌアツにErromangoなる島があり、迷える子羊たちの耳にはこれが「エロ漫画」に聞こえるそうである。もっとも、格式正しきブリタニカによれば「Eromanga」とも綴ると明記されており、素直にローマ字読みすれば紛れもなくエロマンガだ。一説によると、島を訪れたクック船長に住民がヤムイモを提供したとき、現地語で「美味しい食べ物」を意味する言葉を島の名前と勘違いしたのがErromangoの語源ということである。

dinosaur_quetzalcoatlus.pngさらに謎めいていることに、オーストラリア中部クイーンズランド州にもEromangaという地名が存在する。こちらは「熱風吹きすさぶ土地」を意味するアボリジニ語に由来すると考えられているそうで、地理的・言語学的な隔たりから考えてバヌアツの同名の島と関連があるとは思えない。エロマンガ盆地という広大な大地があり、中生代に形成された地層が眠る。ここで見つかった巨大な翼竜の化石が、つい最近ニュースになった。太古の生物に何ら関心もなかったであろうネット民たちが、「エロマンガ内海を飛んでいた巨大翼竜発見」という破壊力全開の見出しにざわついたようである。

少し前にも、エロマンガ盆地で見つかった世界最大級の竜脚類の化石が、ティタノサウルスの新種と判明したばかりだ。ちなみに『メカゴジラの逆襲』に登場する怪獣チタノザウルスは、ティタノサウルスと綴りは全く同じだがもちろん赤の他人だ。エロマンガにせよティタノサウルスにせよ、エキゾチックな固有名詞が文化圏を超えて偶然に一致することは、意外に珍しくないようである。

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