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ハンドドライヤーと自己隔離 [科学・技術]

hand_dryer_air1.png公共施設のトイレによく設置されているハンドドライヤーが、未だに使えない。コロナ対策で使用中止になっていたが、結局たいした感染リスクはないことがわかって、半年以上前に解禁になったはずである。しかしコロナ禍のあいだに、利用者はハンドドライヤーが使えないことに慣れてしまった。設備管理側がハンドドライヤーを使用禁止のまま放置しているのは、敢えて再開する強い要望がないからと思われる。様子見しているうちに、問題の所在自体を忘れてしまう。合理性よりも空気感で判断を保留する曖昧さに、和の雅を感じる。

ところで、海外からの入国者に課してきた14日(10日)自己隔離措置が、ビジネス入国者に対し一定の条件のもとで3日に短縮されることになった。一歩前進だが、あくまで対象者を限定した措置だ。ワクチン完了者は陰性証明があれば入国後の自己隔離が免除される国が欧米を中心に増えている中、日本の動きは依然として鈍い。人の流入が新たな波の引き金になるリスクがある以上、判断に慎重になる理由はわかる。だが、14日という隔離期間にそもそも疫学的根拠があるのか?

ワクチンを完了しPCR検査で陰性だった入国者が、N日の隔離後になお感染している確率Pを考えてみよう。Pの計算はこんな風になるはずである。
P = f1 × f2 × f3 × f4 × f5
f1: 入国者が最近感染者に接触した確率
f2: 接触があった際にウイルスを取り込む確率
f3: ワクチン完了者がブレイクスルー感染する確率
f4: PCR検査で偽陰性となる確率
f5: 陽性者がN日の隔離後に依然としてウイルスを保持する確率

ここで最後のf5をどの程度に抑えるべきか?f1からf4までの掛け算でPが充分小さい確率になっていれば、f5を無理やり下げる必要はない。自己隔離の免除(f5 =1)でもPは充分ゼロに近いと判断する国も増えている。N=14日というのはもともとf5単独でP=0にすることを前提とした、かなり大袈裟な数値である(N=7-10日で感染させるリスクは消えるとされる)。

北半球が冬に向かうなか再拡大が始まっている国もあるが、ワクチン効果は完璧ではなくとも確実に効いているから、去年とはまるで状況が違う。世界がコロナ後を見据えて動き始めているなか、いつまでも鎖国しているわけにはいかない。日本政府の腰が重いのは、データ分析に基づいて独自の客観的判断しているならまだ良いが、あまりそうは見えない。たぶん、感染リスクがないはずのハンドドライヤーをいつまでも無用の長物として放置するのと、基本的に同じメンタリティに囚われている。

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