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襲撃の理由 [政治・経済]

gin_dangan_silver_bullet.png安倍元総理が銃撃され亡くなった。政治的な損失は言うまでもないが、社会に与えた衝撃の大きさはそれだけでは測れない。ファンもアンチも多く、自信に満ち溢れている反面キレ易かったり、日本の政治家としては珍しく良くも悪くも人間味のある人だった。だから安倍氏と一面識もない私たち一市民も、まるで顔見知りが突然殺されたようなショックを受けた。心よりご冥福を祈る。

犯人の動機が奇妙である。強い殺意があったようだが、特定の政治的信条はないようである。安倍氏と特定団体とつながりをめぐる怨恨云々と、不可解な言いがかりを匂わせる供述をしている。襲撃に自作の銃器を用い自宅には爆発物も見つかったことから、計画的犯行を指摘する分析が多い。その割に報道から漏れ聞こえて来る犯人の人物像は、ゴルゴ13のような冷徹なスナイパーのイメージからは遠い。

まだわかっていないことも多いが、自宅で独り黙々と銃器や爆発物を作っていた犯人の心の闇は、政治犯の計画性とは異質なもののように思う。もっと漠然と鬱屈した破壊衝動だったのではないか。その意味で、今回の事件は京アニや大阪のクリニックを狙った放火事件に通じる匂いを感じる。肥大した恨みや自己承認欲求が、他者には理解しがたい論理で仮想敵を造り出し、異常な暴力行為に駆り立てる。

政界やメディアは、言論の自由への挑戦とか民主主義の危機とか勇ましい論説を展開している。しかしこの事件自体に何らイデオロギーの気配もない。政治テロと言う人がいるが、そもそもテロですらない。テロは何らかの意図や主張を持って社会に恐怖を引き起こすことが目的だが、この事件の陰には歪んだ個人的怨恨しかない。政治家やコメンテーターは結論ありきで論理を無理やり逆算する言説がお好きな人が多いが、たまには頭を冷やして検算した方がいい。