SSブログ

中秋の名月 [科学・技術]

tsukimi_jugoya.png先週金曜日(9月29日)は、中秋の名月であった。中秋の名月とは、旧暦(太陰太陽暦)の8月15日(十五夜)に見られる月のことである。太陰暦の一ヵ月は、新月に始まり次の新月直前で終わるので、月半ばの15日頃に必ず満月を迎える。ところが、各種報道が「今年の中秋の名月は満月でしたが、次に満月を楽しめる中秋の名月は7年後です」などと言う。中秋の名月が、半月や三日月になったりすることがあり得るのか?

結論から言えば、もちろんそんな極端なことは起こらない。しかし厳密な意味での満月は、月が地球を挟んで太陽と真反対を通過する一瞬に過ぎない。その一瞬が十五夜の日に起こることもあれば、年によって1から2日ズレることがある。その理由は、月の公転軌道がわずかに楕円形だからである。軌道が真円から少し歪んでいるせいで、必ずしも軌道周期のど真ん中で満月の位置に到達するわけではない。さらに、満月の瞬間と日付が変わる時刻とのタイミング(月の公転と地球の自転の位相関係)にも依存する。

ともあれ1から2日はわずかな月齢の差に過ぎないので、たいていの人の目には充分満月に見えるだろう。日常感覚では、中秋の名月はいつも「だいたい満月」と言って別に間違っていない。TVニュースで「次の満月は7年後です」と科学トリビアを持ち出しても悪くはないが、澄まし顔でこれを言うキャスター当人は何故だろうと思わないのだろうか?疑問に思ってすらいない様子なのが、かえって不思議である。