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年始雑考 [その他]

flower_ume.png新年早々禅問答のようで何だが、なぜ一年の始まりは1月でないといけないのか?当たり前と思われているかもしれないが、実はこんな真冬に年が明けるはずでは本来なかった。暦の歴史を紐解いてみよう。

現在私たちが使うグレゴリオ暦の原型を整えたのはユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)であり、ユリウス暦と呼ばれる。もともと古代ローマではロムルス暦という古い暦が使用されており、今の暦でいう3月から一年が始まっていた。冬が終わり農耕の支度が始まる時期だから、一年の幕開けとして理に叶っている。第一月がMartius、第二月がAprilisと続き、7月から10月はSeptember, October, November, Decemberと呼ばれていたので現在の英語名にそのまま名残をとどめている。始めの数カ月は神話起源の名称を持つが、Sept, Oct, Nov, Decはラテン語で7、8、9、10に対応する接頭語であり、当時の月の順番をそのまま当てはめただけの命名法だ。

ロムルス暦は一年10ヶ月で成り立っていた。年間通算300日余りにしかならないので60日ほど足りないが、収穫期が終わってやることのない冬の2ヶ月はわざわざ暦に数えるまでもなかったのである。この空白の2ヶ月に名前を与え改正したものがヌマ暦と呼ばれ、今で言う1月と2月が当時は一年の最後を占めていた。現在の暦で2月だけ28日と短く4年に一度閏年で29日目が加えられるのは、もともと2月が一年の最終月であり辻褄合わせの調整弁だったことに由来する。

紀元前153年、年末に配置されていた1月と2月を現在のように年頭に移動する暦の修正が行われた。その理由は諸説囁かれているが、当時ローマ帝国の辺境で反乱が勃発し、本来は3月に入ってから任命されるはずの執政官を2ヶ月前倒しして派遣する実態に暦を合わせたという話があるようである。そのせいで、もともと8番目を意味していたOctoberは10月に、第10月のはずのDecemberは12月に追いやられた。この変則的な月順はヌマ暦がユリウス暦に改定された際も引き継がれ、なし崩し的に現在に至っている。

吹きさらしの中でこなす年末の大掃除は辛いし、極寒の大晦日の夜に初詣の列に並ぶのは凍える思いだ。わざわざ厳冬の1月1日に年始を迎えないといけないそもそもの理由は、今となってはどうでもよい古代ローマの内政事情に端を発していたのである。当時ローマ帝国の片隅で小競り合いさえ勃発していなければ、一年の始まりは春先の3月のままだったかもしれない(ただしそれを「1月」と呼んでいただろうが)。元旦にはきっと梅の花が満開だったことだろう。

ところで日本を始め東アジアの国々では、旧暦の一年の始まりは立春にほど近い新月の日に設定されていた。今でも年賀状に新春とか迎春などと書いたりするし、中国では旧正月を春節と呼んで盛大に祝う。ほんとうは春の気配が日増しに色濃くなるころに新年の門出を祝いたいと、誰しも心のどこかで思っているのだ。

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