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憧れの人、憧れの職業 [社会]

ベネッセが小学生3年から6年生を対象に行なった「将来やってみたい仕事」のランキング調査結果を発表した。PR TIMESの紹介記事が詳しい。

男子は上位から順に「ゲームクリエイター・プログラマー」「ユーチューバー」「サッカー選手」がベスト3入りした。ゲームクリエイターやユーチューバーがランク入りするのは近年目立ってきた傾向だが、今年ついに1位と2位に並んだのはコロナ禍の影響でインドア指向が強くなったせいもあるだろうか。4位は野球選手、5位に研究者・科学者がランクインしている。研究者が健闘しているのは同業者としてちょっと嬉しいが、調査対象の母集団によっていくらか順位は違うかも知れない。ベネッセの調査は、研究者が比較的上位に食い込んでいることが多い印象がある。

女子のベスト3は「芸能人」「漫画家・アニメーター・イラストレーター」「パティシエ」の順で並ぶ。パティシエは女の子にとって憧れの職業の定番のようだが、現実には洋菓子職人はむしろ男性の方が多いそうである。聞くところによればプロのパティシエは仕込みに過酷な力仕事がつきもので、結構な肉体労働らしい。ちなみに女子の「なりたい職業」で科学者はランク外である。残念ながら、こちらのほうは学界における現実の男女比にそのまま現れている。日本は、とりわけ数学や物理系の分野で、女性研究者が少ない。

kenkyu_woman_seikou.png日本に比べると、欧米は世代を問わず女性研究者の比率がもっと高い。3年前パリの大学に半年滞在した時、現地の研究仲間とランチに出ると私以外ほとんど女性だった、という日も少なくなかった。日本と何が違うのか理由はいろいろありそうだが、もともと研究職の男女比が自然に釣り合う社会で育てば、女の子にとっても研究者のロールモデルを見つけやすいのかも知れない。おなじく理系専門職でも医師は女子の9位、男子の7位に入っており、普段の生活で触れる機会の多い職種は男女を問わず憧れの目標になる可能性も高い、ということではないかと思う。

同じベネッセの調査で、「あこがれの人」ランキングも発表されている。今年はベスト10のうち7人を『鬼滅の刃』の登場人物が占めた。トップに君臨するのはやはり竈門炭治郎、続く2位では「お母さん」が健闘し、3位から5位は「胡蝶しのぶ」「先生」「お父さん」と続く。少し意外だったのは、先生やお父さんを抑え3位に輝く胡蝶しのぶの人気だ。確かに彼女は口調が柔らかくて笑顔が優しいが、一皮むけば鬼への復讐心が煮えたぎる狂気と紙一重の美女、というキャラではなかったか。子供は不用意に近づかないほうがいい人物のような気がする。

ただ、彼女は鬼に効く毒薬の調合に長けた専門知識と科学的センスの持ち主であり、鬼殺隊随一のリケジョである。もし鬼のいない平和な世の中に生まれていたら、有機合成化学で才能を発揮し相当優秀な研究者になっていたのではないか。胡蝶しのぶに憧れる小学生女子からいつか研究職を目指す人材が続出すれば、とひそかに期待している。

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