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二度目のおつかい [科学・技術]

space_syouwakusei_tansaki.png小惑星探査機「はやぶさ」初号機が注目されたのは、それが順風満帆のミッションだったからではなくて、逆に絶体絶命のピンチを何度も切り抜け奇跡の帰還を果たしたからである。科学としては成果が大事だが、社会にはドラマがウケる。2010年に満身創痍の初号機が故郷の大気圏で燃え尽きたとき、「はじめてのおつかい」のラストで買い物袋を引き摺り半ベソで帰ってくる子を迎える親のように、過酷で孤独な長旅から戻ったはやぶさに涙する人が続出した。はやぶさ開発をめぐる人間模様を描いた劇場映画が、立て続けに3本も作られた。

その後継機のはやぶさ2が先日6年間の旅から戻り、小惑星で採取した岩石試料を送り届けてくれた。現地のタッチダウンにあたり想定外の事象もあったようだが、初号機に比べ危なげのない見事な仕事ぶりである。関係者のたゆまぬ努力と技術革新の結晶だが、ドラマという点では波乱万丈だった先代に比べ、いくらか安定感がありすぎたかも知れない。オーストラリアの砂漠で回収されたカプセルは新聞の一面をさらったものの、二匹目のドジョウを狙った続編映画が作られるという話はさすがに聞かない。

2号機の本体は大気圏突入せず、次の目標に向かって再び長い旅路を邁進中である。さまざまな運用実験や科学観測を行いつつ、2031年に別の小惑星との出会いを目指すそうである。「はじめてのおつかい」ならばきっと「あれから11年・・・」とテロップが流れ、歳月を経たはやぶさ2の勇姿を紹介してくれるだろうか。次の旅は片道切符とわかっているのが少々切ないが、目的地に着く頃には初号機から通算20年を優に越え立派に「親離れ」する年齢なのだから、黙ってその背中を見送ることにしよう。

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