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今年は特別な年? [社会]

昨年の12月25日、こんなメッセージがSNS上の一角を賑わせたらしい。

今日は、自分の生まれた西暦の年と年齢を足すと、世界中の人が皆2020になるそうです。 今度こうなるのは1000年後だそうです!!!Merry Christmas

試しに自分の生年に歳を加えたら本当に2020になったのを見て「すごーい」と喜び、無邪気に拡散する人があちこちで発生した模様である。言うまでもなく、生まれた西暦年に年齢を足せば今年の数字になるのはアタリマエで、「今度こうなるのは1000年後」のわけがない。すでに年内の誕生日が過ぎていることが前提だが、年末間際のクリスマスに仕掛ければ大半の人は当てはまるので、そのタイミングも計算ずみということか。他愛もない悪戯と言えばそれまでだが、フェイク・ニュースの浸透実験として見るとちょっと面白い。

フェイク・ニュースは、必ずしも巧妙に真実を偽装する必要はない。見るからに真偽の怪しい情報でも、人々の願望や恐怖に付け込み簡単に心の隙間に忍び込む。米国大統領選が不正で歪められたと思っているトランプ信奉者が議事堂を襲撃し、ワクチン陰謀論を真に受けたアメリカの薬剤師は大量のコロナワクチンをわざと常温放置したという。気に入らない真実を受け入れるより、心に響く虚構に浸っていたい誘惑が、私たちの心の底でいつもうごめいている。

しかし冒頭の2020年ネタは、特段に強い感情的要因とは結びついていない。コロリと信じてしまう心理の裏に善意も悪意もなく、あるとすればファクトチェックに対する無関心だけだ。執着が薄いぶん喉元に引っかからないので、脊髄反射的にリツイートが繰り返されあっという間に拡散する。ある意味でもっともタチの悪いフェイク・ニュースは、「誰も気に留めない嘘」かも知れない。愛の対極は憎しみではない、無関心だ、と喝破したのは誰だったか?

osyougatsu_text_2021.png数学的には、昨年よりむしろ今年のほうが興味深い。2021は2つの素数43と47をかけ合わせてできる、ちょっと珍しい数字である。3と7、19と23、そして43と47のように、差が4の素数ペアを「いとこ素数」と呼ぶ。次にいとこ素数の積で表される年がやって来るのは4757年(=67✕71)で、なんと2736年後だ。信じるか信じないかはあなた次第だが、簡単にファクトチェックできるのでお試しあれ。