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菅総理の1年 [政治・経済]

nature_kaze.png菅総理が総裁選不出馬を表明し、今月末で首相の座を去ることになった。意欲を見せていた矢先の翻意で、自民党内がにわかにざわついている。1年前、コロナ禍が始まっておよそ半年目で安倍首相からバトンを受け継いだ。誰がなっても、難しい政権運営だったはずである。内閣発足時に60%を超えた支持率は、長期にわたる前政権の官房長官として馴染みの顔であった安定感が大きかったか。しかし、直近では30%を切るまでに支持率が低下した。

感染対策では空回りだったとは言え、安倍総理と同じく勤勉な首相だったと思う。コロナワクチンは欧米諸国より周回遅れながら、日本の2回接種率が5割に迫りつつある状況まで追い上げたのは、菅さんの貢献あってこそと思われる。もちろん、ワクチン接種さえ進めば感染状況が改善し支持率も回復する、という下心はたぶん甘かった。オリンピックで日本選手がメダルを取りまくれば国民の士気が高揚して支持率は回復する、という期待もやはり甘かった。布マスクをタダで配れば国民は感謝する、と踏んだ前任者の浅知恵に通ずる匂いがしなくもない。ただしアベノマスクと違って、ワクチン普及は確実にコロナ禍からの出口へ道筋を付けつつある。

菅総理はもっと丁寧な説明を、と言われ続けた。が、説明をしないことがこの人の芸なのだ。学術会議問題の時は何を訊かれても総合的・俯瞰的と言い続け、オリンピックの前は何を訊かれても安心・安全と呟き通した。丁寧に説明を始めたらそれに対する質問や反論が来るので、さらに踏み込んだ弁明をする羽目になる。本来議論とはそうあるべきだが、口ベタな菅総理は討論の応酬になれば勝ち目はないので、長いラリーには持ち込みたくない。会話が極力噛み合わないよう呪文のような答弁で煙に巻くのが、この人にとっての護身術なのである。

菅さんは官房長官時代から、人事権をちらつかせて官僚を操ることに長けていると言われていた。その官邸主導手法が霞が関の忖度を暴走させ、モリカケに代表される諸問題の温床になったとされる。総理にとっては学術会議問題もその延長だったと思われるが、科学者は官僚と違い黙って従うメンタリティがないので、大騒ぎになった。しかし今回、逆風のなか起死回生を賭け総理が挑んだ党役員の人事刷新が頓挫し、これでついに心が折れたと囁かれている。沈みゆく泥舟を一緒に先導してくれる人は、誰一人見つからなかった。お得意なはずの人事が総理に引導を渡す決定打になったとすれば、皮肉な幕引きである。

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