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スマホ世代のワクチン難民 [社会]

gyouretsu.png東京都が渋谷に新設した若者対象のワクチン接種会場に希望者が殺到し、当初は予約なしの気軽さが売りだったが、現地で抽選券を配ったりと迷走した挙げ句オンライン抽選制に落ち着いた。もともと若者に積極的な接種を促す狙いだったようだが、受けたくても受けられなかったワクチン難民を大量に掘り起こす結果になった。コロナに危機感の薄い若者が副反応リスクを嫌ってワクチンを敬遠している、という一部メディアのお伽噺を行政が真に受け、ニーズを大幅に過小評価したことが混乱の背景にあるようである。

日本でコロナワクチン接種が始まった当初は、なかなか予約を取れない高齢者の困惑が連日報道されていた。ネット予約システムを相手に悪戦苦闘する高齢者も少なくなかった。ようやく若者の番が回って来たのは良いが、ネットを使いこなせても予約の空きがないのであれば元も子もない。ひと頃ワクチンの在庫管理や分配システムが安定していなかったようなので、その余波がまだ響いている地域もあるだろう。が、ほかにも事情がありそうだ。

ワクチンを受けるには、国の大規模接種や自治体の集団接種のほか、地域のクリニック等で個別接種を受ける選択肢もある。しかし20-30代でとくに持病のない人たちには、そもそもクリニックに通う習慣がないと思う。私も若い頃はそうだったし、近くにどんな医療機関があるか調べたこともなかった。結果として、検索しやすい大規模・集団接種に予約が集中しがちなのではないか。小さなクリニックの中には、意外に予約枠が空いているところもあると聞く。だがそこに、ネット慣れした若者にとって盲点がある。

ネット予約システムを構築する余裕のない個人経営の医院は、電話か窓口予約しか受け付けない。物心ついたときからスマホが当たり前だった世代の子たちにとって、ネットでアクセスできない情報はなかなか視野に入らない。仮に見つけたとしても、電話で予約を取ることに気後れするかもしれない。新入社員が電話を取りたがらないという上司の嘆きを聞いたことがある。電話口の親を通さなければ友達と話せなかった固定電話世代と比べ、スマホ世代の若者たちは見知らぬ大人と電話で話す実地経験が少ない。飛び込みで接種を受けられると聞けば、そこに殺到するのも分からなくはない。

何でもネットで用が足りる時代にあって、アナログでしかアクセスできない穴場がまだそこかしこに潜んでいるのである。祖父母のワクチン接種の折にネット予約を手伝ってくれた孫たちに、今度は祖父母が個別接種の電話予約を代行してあげてはどうか?

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