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オミクロンの謎 [科学・技術]

にわかに世間を騒がせているオミクロン株だが、報道だけではよくわからない不可解な点がいくつかある。

virus_corona.png南アフリカで感染が再拡大しているとはいえ、新規感染者数は現時点で一日数千人規模である。人口あたりに換算しても、英国やドイツより一桁少ない。にもかかわらず、瞬く間に世界のあちこちでオミクロン株が見つかった。日本も例外ではない。しかし、アフリカ最南端の国で広まり始めたに過ぎないウイルスが、地球の裏側まで魔法のように拡散するだろうか。もっと以前から各国で密かに浸透していたと考えるほうが、自然ではないか。

そうだとすると、南アで注目されるまで誰も気に留めていなかったことになる。世界に急に広がったように見えているのは、ゲノム解析の指名手配写真が出回るまでは野放しになっていただけかもしれない。ということなら、潜伏している他地域では目立った悪さをしていなかったということか。南アフリカではオミクロン株は急速にデルタ株を駆逐しつつあるというから、デルタ株より感染が早い。とはいえ、ワクチン完了率が3割にも満たない南アフリカで、感染はしばらくのあいだずっと落ち着いていた。札付きのワルだったはずのデルタ株が、ずいぶんと聞き分けがよくなっていた様子で、それはそれで不思議だ。

スパイクタンパク質に約30箇所も変異があるから、ワクチンが効きにくいかも知れない、という理屈はわかる。ただ、変異が多いほど即ウイルスが凶悪化するわけではない。突然変異はランダムだから、たまたまウイルスの生存に有利な変異がおこる確率は低い。30箇所も一度に変異すれば、パワーアップするよりむしろショボくなっても不思議はない。現実には世界に散らばっているからそこそこしぶといはずで、放っておくわけにはいかないが、デルタ株からチャンピオンベルトを奪ったラスボス扱いするほどのタマかはまだわからない。香港のホテルで隔離中の旅行者が空気感染したと言われているが、感染経路は推測の域を超えない。そもそもオミクロン株がアフリカ南部起源でない可能性もあるから、アフリカに渡航歴のない人が罹っていても不思議はないかも知れない。

南アフリカ政府は、諸外国が軒並み門戸を閉ざしたことに苦言を呈した。自ら新たな変異株に警鐘を鳴らしたわりに、いささか往生際が悪い。南ア大統領は、ワクチン格差の是正を国際社会に求めている。これが本音だとすれば、ワクチン外交の呼び水に変異株を利用したい思惑もあったのかもしれない。ところが蓋を開けてみると、世界はたちまち感染国の締め出しに動いた。読みを外した南アフリカ政府が慌てて火消しに走り始めた、という憶測も成り立つ。

危機管理の原則としては、オミクロン株の素性がわかるまでは水際を固めておく判断は正しい。ただ、あつものに懲りてなますを吹いているだけかもしれない。実際のところどうなのか、見識ある専門家の考察が聞きたい。

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