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ながら作業 [音楽]

kaisya_shigoto_music_man.png音楽を聞きながら仕事が捗るか、という話題でつい先ごろ会話が盛り上がったのだが、折しも東北大学の研究者が「ながら」作業の効能に否定的な研究成果をプレスリリースしていたことを知った。聞こえるかどうかくらいの低音量でも、BGMが鳴っていると作業の集中力が落ちるらしい(音量が小さすぎると逆に気になって耳をそばだててしまうせいか)。ガヤガヤした環境でも特定の会話が耳に入ってくる認知能力を選択的注意(カクテルパーティー効果)と言うそうだが、音楽は選択的注意の機能を阻害するのだという。

私は学生の頃は一切「ながら」をしなかった。音楽を聴いたら音楽に集中してしまうし、別の作業に没頭すると音楽は鳴っていても一切耳に入らないので、ながら作業をする意味がなかったのである。最近は気が変わって、YouTubeでBGMを流しながら仕事をする日も少なくない。

気分によってクラシックだったりJ-POPだったりするので、YouTubeのAIは私の嗜好を類推するのにやや苦戦するようである。King Gnu→ミレパ→米津玄師→宇多田ヒカル→藤井風、みたいなミックスリストをセットメニューに盛り込んでくる傍らで、ハチャトリアンやビゼーやバッハが単品で脈絡もなく並んでいる。クラシックは一曲が長いせいか、AIは敢えてミックスリストに組み込んでこない。ガイーヌとカルメンと平均律1巻2巻をつないでしまったら、それだけで一日の就業時間を超える。お薦めにアストル・ピアソラが紛れ込んでいるのを見つけたときは「お前なかなか分かってるじゃないか」と感心したが、ときに「なぜそれをぶっこんできた」とツッコミを入れたくなるヘンテコな提案が飛び出すときもある。

仕事に集中している間は音楽が耳に入らないのは、今も変わらない。だからたぶん、BGMは仕事の効率を上げも下げもしていない。ただ、オフィスに着いてエンジンがかかり始める前とか、ふと集中力が途切れたアイドリング状態のときに、曲がすっと入ってくるのが心地よい。オフィスからふと窓の外を見やり晴天にぽっかり浮かぶ雲に魅入られるように、作業と作業のつなぎをふわりと埋める緩衝材のように音楽が鳴っているのがいい。

水まんじゅうのあんこを包み込む半透明の生地、あれはなんと呼ぶんだろう。私にとっての「ながら」音楽は、ちょうどそのくらいの絶妙な存在感だ。

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