SSブログ

私事で恐縮ですが [その他]

kouchou_sensei_speech.png祝いの席のスピーチだったり芸能人が私的な出来事を発表するときだったり、「わたくしごとで恐縮ですが」という枕詞がよく使われる。なぜ私事を話すのに恐縮しないといけないのか、考えてみると不思議だ。おそらく、私のプライベートなんて皆さん関心ありませんよね、差し出がましくてホントすみませんね、ということなのかと思う。だったら黙っていてもいいわけだが、恐縮ですと断っておいて結局長々と話し出すところがミソだ。要は、自慢やのろけを聞いてほしい本音をカムフラージュする社交辞令が「私事で恐縮」ということなのだと思う。

若い芸能人がよく「・・・させて戴きました」を過剰に連発する。「・・・に出させて頂きまして」「・・・を見させていただいて」などと一見すると礼儀正しい物言いだが、本来は「出演致しまして」「拝見しまして」でいいはずだ。むやみに謙遜して見せる慇懃さが、いちいち私事に恐縮するメンタリティと相通ずるものを感じる。

インスタグラムのようにリア充な毎日を一方的に発信するツールが全盛で、フォロワーが大勢つけば「わたくしごと」の拡散がマーケットとして成立する時代である。それが当たり前の若者たちが昭和世代の仕切る縦社会(芸能界とか)に組み込まれると、私事を語るだけで恐縮する和の雅を教育される。そんな文化的衝突の軋みが、チグハグな謙譲語に表れているんじゃないかという気がするのである。

共通テーマ:日記・雑感