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民主主義の危機? [政治・経済]

アメリカ中間選挙の結果が判明しつつある。選挙期間中、民主主義の危機という言葉が何度も飛び交った。言うまでもなく、二年前の大統領選の結果を未だに受け入れようとしないトランプ元大統領とその支持者たちを指している。

民主主義の対極は専制政治である。トランプ氏がクーデターでも起こしたのなら話は別だが、「票が盗まれた」とかいろいろ駄々をこねつつもバイデン大統領に座を譲るほかなかった。その意味で米国の民主主義はきちんと機能している。問題の本質は、なぜトランプ氏が今も一定数のアメリカ人から熱烈な支持を得ているのかである。どんな無茶苦茶な人物でも、多数が投票すれば権力を手にするのが民主主義だ。ポピュリズムが民主主義の一部である以上、民主主義の危機というより民主主義そのものが抱える限界が露呈しているところが、アメリカ政治問題の核心である。

royal_gyokuza.png税金は安いほうがいい、でも福祉は手厚くないと困る。この二つをともに実現できると「民意」に迎合する政治家がいたら、それは詐欺師である。自国経済が豊かになればいい、そのためには他国を犠牲にしてもいい、とぶち上げて人気を取る政治家が当選したら、良好な国際関係を損ない長期的には自国に不利益をもたらす。衆愚政治というと言葉は悪いが、民主主義は決して最良の政治体制ではない。もし聡明で徳のある君主がいるなら、国が栄え国民が幸せになる理想の政治形態はたぶん君主制だろう。だが、とんでもない人物が王座につけば計り知れない悲劇が起こる。最善には程遠いが最低限持続可能な唯一の政治システムが、民主主義なのである。

中間選挙では劣勢と言われていた民主党が意外な健闘を見せているようだ。それがトランプ人気の翳りを意味するのだとすれば、アメリカがポピュリズムへ傾倒しすぎる風潮に眉をひそめる人たちが、思いのほか多かったということかもしれない。保守にせよリベラルにせよ、極端に走れば必ず現実から乖離する。両極の合間の落としどころを考え続ける人たちが、民主主義の理性を支えているのである。

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