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グローバルサウス [政治・経済]

sekaichizu.png広島でG7サミットが開かれているが、G7の対立軸としてグローバルサウスという言葉がよく聞かれる。新興国全般を指す語で、その語源は途上国の多くが「南半球」にあるからとよく説明されるが、あまり的確ではない。実際には、インドはもちろん東南アジアの大半とアフリカの北半分、中東と中米のすべてと南米の一部は、赤道より北側に位置している。ちゃんと調べたわけではないが、国の数でも総人口でもグローバルサウス諸国の過半数は北半球に属しているのではなかろうか。たぶん、(オーストラリアやニュージーランドを除く)先進国目線で「自分たちより南にある国々」くらいの相対的な地理感覚でサウスとまとめているに過ぎない。

従って、サウスとノースを分ける基準は南北半球ではなく、むしろ低緯度と中高緯度の違いを象徴していると考えた方が良い。ナイルやメソポタニアなど古代文明は低緯度帯に栄えたが、現代の先進国はもっぱら中高緯度に集中している。それは何故なのか、という地政学的な分析は誰か既にやっているかもしれないが、素人が想像するに、冬場の気候が厳しい環境で持続可能な文明を構築するには、相応の科学技術力と経済力を育まざるを得ないということではないか。北欧諸国がおしなべて世界トップクラスの高福祉国家であるのは、極寒の冬で命をつなぐためには生活水準の最低ラインを高く設定せざるを得ないからと想像する。

その仮説に立つと、南半球でも赤道から遠い(うんと南にある)国々は先進国であるべきという理屈になる。しかし現実には、南北非対称な経済格差が存在する。その理由はおそらく、北極海の周囲を大陸がぐるりと取り囲んでいる北半球と違い、南半球の中高緯度は南極大陸を除くと海ばかりで人が住めないからではないか。アフリカ大陸は最南端でも南緯35°に届かず、それより高緯度側(南側)に土地を持つ国はオーストラリアとニュージーランド、そしてチリとアルゼンチンだけだ。アルゼンチン以外の三国はOECD加盟国で、アルゼンチンも百年前は世界有数の経済大国であった。「先進国は中高緯度で育つ」という即席理論は、確かに南半球でも成立しているのである。

もし南半球に人が住める大陸がもっと多かったなら、そこには欧米や日本と互角に渡り合う先進国がひしめいていたかもしれない。そんな世界でどのような国際情勢が立ち現れるのか、想像も及ばない。一つだけ確かなのは、その世界で新興国を「グロバールサウス」と呼ぶ人は誰もいないはずということである。

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