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Don't worry, I'm ... [語学]

butai_stage_small.pngとにかく明るい安村さんが、トレードマークの一発芸「安心してください、はいてますよ」で英国のオーディション番組『Britain’s Got Talent』を席巻した。現地ではTonikaku略してTonyと名乗り、歯に衣着せぬ辛口コメントで知られる審査員Simon Cowellに「君は最高に面白い」と言わしめた。準決勝で敗退したものの審査員が選ぶワイルドカードに選出され、まさかの敗者復活で決勝に進んだ。優勝は逃したが、ワイルドカードで白羽の矢が立ったこと自体、優勝候補というより最強の余興芸人としてお座敷に指名がかかったと解釈すべきだろう。

彼の決め台詞は、英語で「Don't worry, I'm wearing」となった。他動詞のwearに目的語が不在なので、英語としては文法的におかしい。ところが、むしろ英語ネイティブには違和感があるがゆえに、彼が「I'm wearing.」と決めるたび観衆が「... Pants!!」と叫んで文章を完成させるルーチンが誕生し、却って会場一体で盛り上がるノリが完成したと分析する人もいる。英語のwearは、パンツはもちろん上着も帽子も眼鏡も身に着けるもの全般に使うので、確かに目的語不在では意味が曖昧だ。日本語の場合、パンツをはく(穿く)・上着を着る・帽子をかぶる・眼鏡をかける、とアイテムごとに動詞が変わるので、「はいてますよ」だけで目的語が容易に想起される。

ちなみに、英語には自動詞のwearも存在する。意味が全く違い、擦り減って無くなるといったニュアンスを持つ言葉だ。My patience is wearing thin(私の我慢もそろそろ限界だ)とかThe battery is wearing out(バッテリーがぼちぼち切れる)のように使ったりする。「I'm wearing」を無理やり自動詞として訳せば、「俺もいい加減ボロボロだよ」みたいになるんではなかろうか。人気の浮き沈みが激しい一発芸の芸人にとっては、ちょっと笑えない含意かもしれない。とくに安村さんのファンではないが、束の間とは言え異国まで行って大いに人々を沸かせたのだから、末永く頑張ってほしい。

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