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Road to Perdition [映画・漫画]

tabako_hamaki_suigara.pngTBSの『VIVANT』最終話を見ていて、20年ほど前に見た映画『Road to Perdition』を思い出した。雑にまとめれば、大恐慌直後のアメリカ中西部を舞台に一匹狼の殺し屋がギャングと渡り合う話である。トム・ハンクスとポール・ニューマンに若き日のダニエル・クレイグ(まだジェームス・ボンドでなかったころ)が絡む、どこまでも渋く暗くそして哀しい映画である。

ハンクス演じる凄腕の殺し屋サリヴァンは、孤児だった幼少時ニューマン演じるギャングのルーニーに引き取られ、我が子同然に育てられる。しかしそれが面白くないルーニーの実子コナーは、一計を案じサリヴァンを妻子もろとも消し去ろうとする。サリヴァン本人と長男マイケルは難を逃れるが、妻と次男は殺されてしまう。コナーへの復讐を誓うサリヴァンと、不良息子の蛮行に激怒しつつ実の息子を切り捨てられないルーニー。ギャングの非情な掟の中で、二人はやがてどちらも望んでいなかった直接対決へと追い込まれていく。

『Road to…』は、さまざまな父子の愛情と葛藤が交錯する映画だ。ルーニーとサリヴァン、ルーニーとコナー、そしてサリヴァンと幼いマイケル。よそよそしい父に孤独感を募らせていたマイケルだが、それが血塗られた己の道から息子を遠ざける父の想いに他ならないと気付くことになる。サリヴァンを追う刺客から父子二人で逃亡する道中の果て、ついに刺客と対峙した息子マイケル。しかし、彼は銃の引き金を引くことができない。マイケルが殺し屋の血を受け継がなかった事実を最期に目にしたサリヴァンは、息子の腕の中でホッとしたように息を引き取る。

物語の山場、息子同然のサリヴァンから銃口を向けられた絶体絶命のルーニーが、「I'm glad it's you=(俺を殺るのが)お前で良かった」と呟くシーンがある。『VIVANT』最終話でよく似た台詞が出てきたので、そこでふと『Road to…』を思い出したのである。実子と育ての子の確執というサイドストーリーも、二つの物語に共通している。

ただ『VIVANT』の作者は、国を守るためであれば手段を選ばない「別班」的哲学を、どちらかというと肯定的に描いている節がある。組織の掟が人間性を圧し潰す悲劇を描いた『Road to…』とは対照的だ。『VIVANT』はエンタメとしては破格に面白かったが、全体主義的な美学が無邪気に匂う甘さだけが、どこか喉に刺さった小骨のようにスッキリしない。

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