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サカバンバスピス [動物]

kodai_sacabambaspis.png4億年以上前に絶滅した古代魚が、いま静かなブームを呼んでいるらしい。その名をサカバンバスピスといい、化石が最初に発見されたボリビアのサカバンバ村に由来する。古生代オルドビス紀に生息していた無顎類の一属だそうである。

舌を噛みそうな名の古代魚が脚光を浴びた経緯がまた謎めいている。ヘルシンキ自然史博物館の片隅にひっそり展示されていたサカバンバスピスの復元模型を、古生物学を研究する大学院生がX(旧ツイッター)に上げた。すると、そのすっとぼけた愛らしいビジュアルが、なぜかフィンランドから遠く離れた日本でバズった。試しにググってみると、イラストやぬいぐるみからTシャツのプリントに至るまで、ゆるキャラ化したサカバンパンピスがそこかしこに溢れている。

ヘルシンキ自然史博物館の模型やそれをもとにした図案では、サカバンパンピスの体の終端は団扇状の尾鰭で終わっている。不完全な化石資料から再現した初期の想像図なのかもしれないが、実際にはその先に細長い尾が伸びていたようだ(参考←このサイトのイラストも絶妙な愛嬌が憎い)。胸鰭を持たない寸胴な体つきから察して、泳ぎは上手くなかったであろうと推測されている。サカバンパンピス本人にしてみれば、余計なお世話かもしれない。

無顎類という名の通り顎をもたず、サカバンパンピスの口はいつも開けっ放しであったらしい。その不器用さが、じわじわくるルックスの秘密と思われる。無顎類は現代ではその大半が絶滅してしまい、円口類に属する二類(ヌタウナギとヤツメウナギ)だけが現存している。ウナギという名が付いているが似ているのは細長い見た目だけで、いわゆる鰻とはまったく別の生物だ。円口類は脊椎動物の中でもっとも原始的な部類で、遺伝的には鰻とヤツメウナギより鰻とヒトのほうがまだ近縁だとどこかで聞いた記憶がある。

初期の人類が地球上に現れたのは、せいぜい数百万年前くらいだ。私たちは、46憶年の地球史でごく最近になって表れた新参者に過ぎない。サカバンパンピスは、想像を超える太古の昔、地球史にいっとき名を刻んだ遥か大先輩である。とぼけた顔をしているからと言って、侮ってはいけない。

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