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番外編:専門家グループ三態 [科学・技術]

テレビで新型コロナを解説する医療や疫学の専門家には、少なくとも3つのグループがあるようである。

figure_presentation.png一つ目は、専門家会議や自治体諮問委員の当事者。施策に影響を及ぼす立場におられるので、政府や地方行政の動きの科学的根拠を知りたい時に頼りになる。ただし、一斉休校の時のように専門家が提言しなかったことを突然首相がぶち上げたりすると、立場上全面的なサポートも真正面の批判もできないので、急に歯切れが悪くなる。専門家会議が「アベノマスク」をどのように見ているのか、一度本音を聞いてみたい。

二つ目は、行政のアドバイザーではないが報道番組に毎日のように登場する専門家だ。おそらく番組の台本やパネルの監修を務めながら、キャスターの解説にお墨付きを与える役目を果たしている。報道番組は(生放送の宿命と思うが)予定調和を優先する傾向にあり、立ち位置を心得て既定路線を逸脱しない専門家が重宝される。その対極にあるのが、討論系バラエティに出没する第三のグループだ。予定調和より場を盛り上げる人材が求められるので、時々突拍子のないことを言い出すちょっとエキセントリックな「専門家」もおられる。信憑性が定かでない語りも飛び出すが、安全運転指向の正統派解説では出てこない視点が発想の転換に役立つこともある。

メディアが専門家に望む解説が、科学的に正鵠を射ている保証はない。いくら「今まで経験したことのない怖い感染症ですね」というコメントが欲しかったとしても、そんな個人的経験値に過ぎない悲観的心象を専門家が口走れば、視聴者の不安が増すだけだ。俗説に流れずしかし奇をてらわず、プロの視点で状況を鋭く分析し噛み砕いて説明してくれる専門家が頼もしい。第二グループと第三グループの狭間にいるくらいの方が最も信頼できるように思う。個人的には、久住英二医師のファンだ。落ち着いた口調の中にちょっぴりユーモアを交えた語りがわかりやすく、どんな質問にも聞き手の意図を瞬時に汲んで答える知的反射神経が冴え渡る。何より専門家としての視点がブレないので、あやふやな常識にも挑発的な質問にも足を取られない。科学者として学ぶべきところが多い。

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