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番外編:すべる首相 [政治・経済]

figure_dance.png安倍首相に共感を覚えることはあまりないのだが、最近少し気の毒に思えてきた。やることが派手に滑りがちである。星野源の『うちで踊ろう』にかぶせた「コラボ」動画が物議を醸しているが、もともと育ちが良いせいかソファでお茶を嗜む姿がハマり過ぎてしまったようである。たしかに政府のコロナ対策は機動性と即効性に難があるとは言え、安倍総理は基本的に生真面目で勤勉な人だ。首相が週末に自宅でくつろぐ一コマを糾弾しようとは思わないが、ノリが悪すぎるところには違和感がある。芸能人が上げるコラボはたいてい一緒に歌ったり踊ったりジャム感満載なのに、首相の動画は一切音楽とシンクロせず、セッションする気がまるでない。そのせいで、隣で歌う星野さんを意図せずディスっているような仕上がりになってしまったことが、見ていてイラッとくる最大の原因じゃないか。もっとも、歌い踊る首相を見たかったかと聞かれれば、微妙なところだが。

アベノマスクも問題の本質は同じだ。品薄の現状を憂いてマスクを全世帯に配布する意気込みまでは良かった。一律2枚という不可解な方針も、無いよりはマシだから無駄ではない。最大のがっかりポイントは、なぜ今どき街角で見かけることがめっきり減った「給食当番マスク」なのか、ということだったと思われる。マスクは眼鏡と同じで顔の一部だ。いくら洗って再利用できても、いやむしろ繰り返し使うならなおさら、お仕着せにレトロすぎるマスクが送られてきてもテンションが上がらない。小池都知事がこれみよがしに可愛い系の手作りマスクで会見に登場すると、ああここでも差をつけられたな、と皆ひそかに思っているのではないか。

どこの職場にも、渾身のジョークがすべって寒い空気を醸成してしまう残念な上司がいる。悪い人ではないのだが、何かが救いようもなくズレている。総理に適切な助言をするスタッフが官邸にいないのか、いても耳を貸さないのか。いずれにせよ、最近何だか気の毒である。