SSブログ

COVID-19自由研究その4 [科学・技術]

緊急事態宣言がいきなり全国展開し、日々積み上がる感染者数や死者数がますますメディアで飛び交うようになった。しかし、ナマの数値を咀嚼しないまま飲みこんでは消化に悪い。漠然とした不安が膨らむだけで、滋養にならない。数字に意味を与えるべく、素人なりにデータを睨み続けた自由研究の第4弾である。今回は国内における過去一ヶ月余りの動向を掘り下げたい。先週の第3弾と同じく、東洋経済ONLINEが集計した厚労省データを活用した。

「症状のある感染者のうち約80%が軽症から中等症・14%が重症・6%が重篤」という中国の2月時点の調査結果を未だに引き合いに出す専門家がおられるが、日本の現状ではどうか?COVID19-mortalityJpn.png図の青線が総感染者数に対する重症者数の割合の推移だ。ここで言う重症者とは人工呼吸器または集中治療室で治療中の患者を指し、重篤者を含んでいる。2月末から3月初旬は最大10%程度まで上昇したが(グラフ枠外)、ひと月前からは5~6%から2%程度の間で推移している。検査陽性の多くは有症者なので(そもそも無症状では濃厚接触者でない限り検査対象にならない)、20%が重症ないし重篤という数字は日本の実態に比べると過剰のようである。PCR検査対象にならなかった疑い患者のうち一定数が罹患しているとすると、その数を分母に加えれば実際の重症者率はさらに低いはずだ。とは言え、医療体制が逼迫している現状に変わりはない。

致死率(総感染者数に対する死者数の比率、緑線)は3月中旬にピークを迎え、その後下がってここ一週間ほどで底を打っている。一方、感染拡大率(総感染者数に対する一日当たりの新規感染者の割合、白線)は致死率の山型カーブをひっくり返したパターンである。この理由は先週触れたとおり、感染がわかってから病状が悪化し亡くなるまでの時間差を反映した統計効果として説明できる。すなわち、感染拡大が鈍りつつあるフェーズでは、死者数が少し前の急拡大の記憶を引きずっているため致死率を大きく見せ、逆に感染拡大が加速しているとき致死率は減っていく。そのため、感染拡大率と致死率は増減傾向があべこべになる。重症者率のカーブも致死率と似た増減パターンを辿っているが、やはり感染拡大率を逆転させた傾向として説明できる。ただし、減少が始まるタイミングや底打ちのタイミングをよく見ると、重症率が致死率よりわずかに先行する。重症化から死亡までの時間差が見えていると思われる。

3月下旬に加速傾向にあった感染拡大率は、4月に入った辺りから頭打ちになり、4月12日前後から感染拡大が鈍り始めた。感染実態が検査に現れるまで時差があるので、4月7日に出された7都府県対象の緊急事態宣言の成果と見てよいか、今のところ微妙か。ただ、感染拡大率が12日時点で10%、16日で6%と、直近では一日1%程度減のペースで感染拡大率が収まってきているので、直線的に外挿すれば4月22日以降感染拡大は縮小に転ずることになる。単純な希望的観測ではあるが、4月7日から2週間後にピークアウトという目標は、とりあえず視野に入ってきたのではないか。

さて、上で述べた時間差の統計効果を確かめるため、簡単な検証をしてみよう。推定致死率をf、陽性判定から死亡までの遅延をt日として、致死率シミュレーションを「f ✕(t日前の総感染者数)÷総感染者数」と計算する。COVID19-mortalityJpnSim.png図にf=5%(破線)と3%(点線)について遅延を7日と仮定したシミュレーションを描いてみると、実際の致死率(実線)はちょうどその狭間を推移する。目分量で試行錯誤したところ遅延7日が実測カーブのピークによく合ったので、新型コロナによる死者は検査陽性から平均的には一週間ほどで亡くなるものと推定される。3月中旬から3月末まで推定致死率5%の曲線にぴたりと沿っていたが、4月から少しづつ下方にシフトし現時点は3%曲線上にある。シンプルに解釈すれば、今月に入って致死率が改善してきたことになる。

ただ、そもそも感染者数の統計がPCR検査に依存しており未検査の感染実態が見えていないので、依然として確たることは何も言えない。検査が拡大して分母が膨らみ、致死率が減少して見えているだけかも知れない。国内のPCR検査はキャパの限界に近づいていると言うし、患者を受け入れる医療体制は既に限界を超えつつある。検査能力を拡張できるスピードは、市内感染拡大の速さにとても追いつけていないのではないか。データで直接見えない感染実態を大雑把にでも推測する方法がないものか、色々考えているがまだ答えが出ていない。

共通テーマ:日記・雑感