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番外編:ご協力に感謝します [政治・経済]

figure_ojigi.png首相や専門家会議が会見で外出自粛要請に触れるとき、「皆様のご協力に感謝申し上げます」みたいなことを必ず言う。いつも引っかかるのだが、いったい私たちは何に対して感謝されているのか。ありがとうと言われて怒る人はいないので別に良いのだが、外出をガマンしていたのは自分たちと社会全体の安全のためであって、お上の施策に「協力」しているわけではない。

諸外国の場合、首脳がコロナ問題で演説するときは「難局を一緒に乗り切りましょう」というスタンスが一般的だ。一国の長であると同時に一人の市民であり、メッセージを送る側と受け取る側が同じ苦悩を共有している、という前提がある。だが私の知る限り、日本だけが国民に「協力をお願い」し、努力が実れば第一声で感謝する。強制力のない法制度だから下手に出ざるを得ないのかも知れないが、日本の為政者にとって感染症対策はどうやら行政サービスの一環に過ぎず、当人は役所のカウンターのこっち側で国民はあっち側、という感覚なのではないか。高所から感謝されればされるほど、あなたたちには他人事なのね、という印象が深まるばかりである。

世界中の国々で首相や大統領が求心力を増す中、逆に支持率を落としている稀な例がブラジルのボルソナロ大統領と我らが安倍首相だそうだ。アベノマスクや特別定額給付金の迷走で失笑を買ったとは言え、ボルソナロ大統領の破壊力に比べれば安倍首相は至ってまともである。だが、この人の演説はいつも不思議なほど心に響かない。言っていることが間違っているわけではなくて、共感回路が欠落しているせいではないかと思う。これが政府の対策です、皆さん協力して下さい、協力しましたねご苦労さま、今後はくれぐれも緩みのないよう、を繰り返す限り、内閣支持率は上がらないだろう。「私も辛かったけど皆さんはもっと大変ですよね、あと1〜2年くらいかかるかも知れないけど、今を耐えれば必ず普通の生活が戻りますよ」と一度言ってみたらどうか。感謝を百度繰り返すより、よほど心の琴線に触れるんじゃないだろうか。

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