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年始の感染拡大について [科学・技術]

COVID-Tokyo_Jan2021.png一都三県に緊急事態宣言が再発令された。正月明け直後から首都圏を筆頭に新規陽性者が急増し、宣言発令にずっと及び腰だった政府も日和見できなくなった様子だ。東京都の新規陽性者(右図、都内のコロナ感染動向サイトより)は1月7日に2,500人近くまで跳ね上がり、その後再び落ち着いている。検査体制が縮小していた三が日のしわ寄せが上積みされたせいもあると思うが、7日移動平均(各日ごと過去一週間の平均値)でも顕著な増大の痕跡が見られるので、単に検査の遅れだけでは説明できない。

分科会の押谷教授が、急増の理由の一つとして陽性の事前確率が高い人が検査に加わった可能性を挙げておられた。前からうすうす思っていたのだが、自費検査の広がりが関係しているのではないか。木下グループなど民間業者が破格に安価なPCR検査サービスを開始し、出張や帰省前に陰性証明を得たい需要に応え話題になっている。自覚症状のない人が念のために受ける検査の大半は陰性と思うが、非医療系の検査機関は自治体への報告義務がないそうで、そこでの陽性率は公式統計には反映されない。しかし陽性結果が出た人は、医療機関に相談するよう促される。つまり医療施設外の自費検査は、事前確率ほぼ100%の陽性患者を掘り起こし行政検査ルーチンに送り込む、スカウト機能を果たしているわけだ。年末に帰省を控えて自費検査を受ける人が増えたとすれば、これが新規陽性者を上積みする一因になった可能性もあるだろうか。

consult-Tokyo_Jan2021.pngただ、増えていたのは無症状の陽性者ばかりではない。東京都のサイトから、都がコロナ対策で設置した発熱相談センターでの相談件数を見ることができる(右図)。当初は1,000~1,500件で変動していたが、クリスマス頃から急増し1月3日に3,000件を超えた。年越しの休み中にコロナ患者が多く発症し、週明けにどっと検査を受けて陽性者が急増した、と見て一応データの辻褄は合う。年末年始は繁華街に繰り出す人はむしろ減っていたはずだから、親族が集まり密になりがちな家の中が「夜の街」より危険な感染の温床になったのではと推察される。

国や自治体のコロナ政策は、GoTo一時停止や時短要請など、市中感染の抑制にターゲットが偏っている。ウイルスを持ち帰るタネを絶つ一定の効果はあると思うが、家庭内感染そのものを防ぐ役には立たないから、年末年始の感染増大を阻止できなかったのも不思議はない。松の内が明けてひとまず陽性者急増の山は過ぎたようだが、時短要請の実効性は依然よくわからない。飲み屋が軒並み8時で閉まってしまえば、友人や同僚どうし自宅に集まって宴会を始める人も出てくるかも知れない。むしろきちんと対策をしている飲食店で飲んでいる方が、人目もあっていくらか歯止めになるのではないか。

イギリスではロックダウンが再発動されたが、それでも感染拡大が止まらないようである。メディアはすぐ変異種の話になるが、どんな感染力の強いウイルスでも人の接触機会を完全に絶てば必ず減っていくはずだ。増え続けているということは、つまるところ人流が遮断されていないのである。店が軒並み閉められていても、誰かの家でこっそり3密会食していたら取り締まる術はない。イギリスに限らず、強力なロックダウンを実施した国で感染抑止が長続きしないのは、我慢できなくなった人から順に水面下に潜り、ホームパーティー等を介してウイルスが拡散しているということかも知れない(想像にすぎないが)。ハンマーを闇雲に振り下ろすだけではなくて、持続可能なコロナ対策に妙案はないものだろうか。

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