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第5波の現状について [科学・技術]

コロナ第5波はまだ出口の見えていない状況ではあるが、現時点でわかっている国内の特徴を整理してみたい。元データは各種関連サイトを参考にした(日経東洋経済東京都東京モニタリング会議など)。
1.第5波は東京が震源地であったことはおそらく間違いない。7月12日に発令された緊急事態宣言は、東京(と沖縄の宣言延長)だけが対象だった。東京の新規感染者数はお盆前後にピークを迎え、現在では前週をやや下回る減速傾向にある。拡大率(感染者数の一週間前との比)はオリンピックが始まった7月下旬辺りが山場で、8月に入る前後から拡大率は鈍りはじめていた。
2.他の道府県は、東京より数週間ほど遅れて急拡大が目立ち始めた。8月2日になって大阪と首都圏3県に緊急事態宣言が出され、8月20日と27日に相次いでその対象地域が広がった。東京の波が地方に波及したものと思われる。遅れて始まった分、拡大鈍化の訪れも遅い。
3.東京の陽性率は最大24%程度まで上昇していたが、直近では20%まで戻っている。陽性率の時系列カーブは、おおむね陽性者数そのものと連動しているようである。
4.東京都のデルタ株は毎週増加の一途をたどり、8月中旬で90%を超えている。
5.感染者に占める高齢者の割合は第4波以前より顕著に少ないが、40-50代を中心に重症者数が増え、過去最悪の水準に達している。

以前の波は、原因が比較的はっきりしていた。第3波の引き金は、年末にじわじわ広まりつつあったウイルスが年始の家庭内三密で急増したものと思われる。春に大阪で猛威を奮った第4波は、2月末に緊急事態宣言を一抜けした大阪が年度末の送別会シーズンを迎え、感染拡大を誘引したと推察できる。では第5波の感染拡大が東京で先行していたのは何故か?東京は直前の6月20日まで緊急事態宣言下にあった。デルタ株が原因とすれば、そのタネはどこから入ってきたのか?オリンピック前の1-2ヶ月間は、五輪関連業者やメディアを含め少しずつ海外からの人の流入が増えつつあったと思われるので、一定のリスクはあった。そう言えば南米のラムダ株は、オリンピック関係者が日本に持ち込んだという話だった。

数学的には、デルタ株が大勢を占めれた時点で感染拡大率は高値安定するはずである。だが、東京では明らかに拡大率が減り始めている。何故か?本当は拡大が続いているのに検査が追いついていない可能性はある。実際のところ見えていない感染者は多いと思うが、直近で陽性率が下がり始めたことを考えれば、東京の感染拡大は(少なくとも短期的には)実際に減速していることは間違いないように思える。お盆週に都内から人流が減ったことを指摘する人もいるが、拡大減速は8月初旬から既に始まっていた。あと1、2週間で全国的な感染拡大も同じように減速に向かうのか、注目したい。

saigai_kyumei_boat.png高齢者の感染が減っているのは、明らかにワクチン効果だ。デルタ株のブレイクスルー感染が指摘されているが、ワクチンの重症化予防効果はデルタ株にも効くという見解が一般的のようである。より若い世代にもワクチン接種がゆきわたれば、将来的には重症者数は抑えられると期待される。若者がワクチンに消極的と言われるが、渋谷の予約不要の接種会場では大行列ができた。

ワクチンが怖いという人は、沈没する船から救命ボートに飛び移るとき、足が滑ったらどうしようと尻込みするのに似ている。ボートの脇で海に落ちても、たぶんすぐに誰かが助けてくれる。しかし飛び移る勇気が出ないまま沈みゆく船と運命を共にするなら、その限りではない。

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