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ほぼ皆既月食 [科学・技術]

moon_michikake06.pngこの金曜日夕刻、最大で約98%が欠ける部分月食が全国で見られた。「ほぼ皆既月食」という触れ込みで、思いのほか盛り上がったようである。

日食の場合、「ほぼ皆既日食」には金環日食という立派な名前がついている。日本では2012年に金環食が見られた。皆既日食も金環日食もなかなか身近で体験する機会がなく、21世紀中に日本で観測できるのはそれぞれ6回づつに限られるそうである(参考サイト)。以前ブログで書いた覚えがあるが、皆既日食そのものは地球のどこかで頻繁に起きている。ただ、人が簡単にアクセスできない僻地で天体ショーがひっそり終わるケースが圧倒的に多い。月食は日食よりむしろ発生頻度は少ないそうだが、地球上に月の影が落ちる狭い地域でしか見ることの出来ない日食とちがい、月が地球の影にすっぽり覆われる皆既月食は(夜の側にいる限り)地球上どこにいても体験できる。数年見られないこともあるが、皆既月食が同じ年に何回も出現するときもある。

一部メディアが「ほぼ皆既月食」は89年ぶりとか140年ぶりとか希少感を煽っているので、笑ってしまった。正真正銘の皆既月食は数年と待たずに再体験できるのに、「ほぼ」がつくと逆に約100年に一度クラスの期待感で祀り上げられるのは、どういうわけか。私たちはもともと、100%に微妙に満たない未完の美学が大好きなのかもしれない。完璧に目鼻立ちの整った美男美女はむしろ没個性的で、顔立ちのどこかがわずかに崩れていればこそ、そこに唯一無二の魅力を感じたりする。

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