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マスク美人と伊達マスク [社会]

medical_mask_diagonal_view.pngマスクをしていると綺麗に見える人を、マスク美人と呼ぶそうである。身も蓋もない言い方をすれば、マスクを外した時にがっかりされる顔、ということになる。しかし街中ですれ違う人が軒並みマスク顔ばかりになって久しい今、大抵の場合マスクは人を美しく見せる方向に作用するのではないか、と密かに確信するに至った。最近読んだネット記事で知ったが、それは美容業界ではとっくに常識なのだそうである。マスク顔で人目に晒される部分は眼で、(鼻筋や輪郭と違い)メイクでいかようにもイジることができる。マスクで隠れている部分は、他人が妄想で盛ってくれる。そんな本人と他人の意図せぬ共謀が、マスク美人を量産するのである。

コロナのずっと前から、「だてマスク」という言葉があった。風邪でも花粉症でもないのにマスク装着で街を歩く人が、若者を中心に一定数いた。メイクが楽といった実際的な理由はさておき、顔という「プライベート空間」がマスクで守られる安心感が落ち着くのだそうである。自分の顔に自信がないのか、周囲の視線が気になる過剰な自意識の裏返しなのか、いずれにせよ自己肯定感の低さがマスクに安らぎを求める心理につながっている気配がある。上述の記事によれば、コロナが落ち着いてもマスクを取りたくない人が8割を超えているそうである。マスク生活が定着した一年半のあいだに、「だてマスク」派に目覚めてしまった人が急増したということかもしれない。

日本の若者は海外諸国に比べて自己肯定感が目立って低いというデータがある。そんな社会的土壌が、マスクをしたがらない欧米の人たちとの好対照を生み出しているのだろうか。諸外国ではマスクを自分と社会を隔てる壁のように嫌い、日本ではむしろマスクを社会から自分を守ってくれる盾のように信頼する人たちがいる。海外の人には理解を超えるメンタルかもしれないが、パンデミックの社会では明らかに感染抑止に貢献した。

自尊感情に溢れた人は日々を幸せに生きていると思うが、他人から見れば唯我独尊と紙一重だ。その胡散臭さに敏感な人ほど、自己肯定感から無意識に距離を取る。伊達マスクに依存する若者たちの心理は、50歳直前のオッサンにもわからないでもない。だが実際問題としては、マスクは息苦しいしメガネは曇るし、しなくて良いならそれに越したことはない。

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