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国葬問題 その2 [政治・経済]

安倍元総理の国葬問題を取り上げた前回のブログはほぼブラックジョークだったので、今回はもう少し真面目に考えたい。戦後、国葬が執り行われた首相は吉田茂氏しかいない。吉田茂と安倍晋三のお二人と他の総理経験者との間に明確な一線が引けるのだとしたら、それはいったい何だろう?官房長官は安倍元総理が国葬に相応しい理由として、憲政史上最長の在職期間、選挙期間中の非業の死、さまざまな業績、の三つを挙げている。

個人的には、安倍さんの最大の功績は外交にあると思う。積極的に外遊に乗り出し、米豪印とクアッド創設に向け尽力し、他国の元首が軒並み手を焼いたトランプ元大統領と良好な関係を築いた。国際外交の場で日本の首相が積極的に存在感を発揮した例は、他にあまり記憶がない。安倍さんの英語スピーチを聞くと話慣れていないのが明白だったから、英語が流暢な人ではなかったはずだ。仕事の話は通訳がいるから良いが、プロが訳す程でもない雑談にこそ人柄がにじむこともある。それでも胸襟を開いて他国のリーダーの信頼を勝ち取る、意志と努力の人だったのだと思う。だから、関連各国から元首やそれに準ずる政治家が大勢弔問に訪れる大掛かりな儀式を行うことは、安倍さんに相応しい見送り方に思える。

三千日を超える在職期間については本当にご苦労様でしたと思うが、国葬の話になったとき「長けりゃいいのか?」という反論がほとんど聞かれないのが不思議だ。首相は直接選挙で選ばれる大統領とは違う。お膝元の選挙区を除けば、国政選挙で首相本人に投票した人はいない。在職期間が長いのは与党が強かった(というか野党が弱かった)ことと党内で安倍さんに適う政敵がいなかったのが理由であって、在任中ずっと国民が首相個人に信任を与えていたとは限らない。歴代内閣と比較し第二次安倍内閣の支持率は確かに高水準にあったがときどき不支持率が上回ったし、小泉内閣の支持率はもっと高かった。それに第一次安倍内閣の末期は、参院選の自民党惨敗とか閣僚の相次ぐ不祥事でいろいろ大変だった。

calender_himekuri.png「非業の死」が国葬の理由の一つに挙がることに、微妙な違和感を覚える。仮に病死だったとしても首相の業績は何ら変わらないはずだが、亡くなり方次第で国葬になったりならなかったりするのか?そもそも襲撃犯の動機は安倍氏の政治信条とは何の関係もなかったから、道半ばで不穏分子の凶弾に倒れた愛国的政治家というセンチメンタリズムで物語を整理することは難しい。むしろ、後味の悪い旧統一教会問題が雨後の筍のように噴出している。

支持率急落中の岸田総理にとっては、自民党保守派と世論の板挟みで頭を抱えていることだろう。早く9月27日が過ぎて嵐が去ることを、日々カレンダーをめくりながら願っておられるのではないか。

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