SSブログ

最初の一滴 [社会]

sports_ouen_soccer.pngドイツに勝って、コスタリカに負けた。ワールドカップのグループステージが突入した波乱の展開はさておき、現地で応援する日本サポーターの映像を興味深く見守っている。几帳面にゴミを片付けて回る様子が話題を呼んでいるが、書きたいのはそのことではなく、ノーマスクで楽しそうに絶叫する彼らの姿である。誰もマスクをしない文化圏に飛び込めば、母国ではマスクを手放せない日本人も即座にそこに乗っかることができる。これを確認できて少しホッとした。

コロナ禍前半の頃は、日本人のマスク着用率の高さは明らかに重症化や死亡件数の抑制に貢献した。しかしその代償として、ノーマスクで歩きまわることに罪悪感を感じる空気感が社会全体に浸透してしまった。ワクチンと自然感染のハイブリッド免疫なる言葉が頻繁に聞かれるようになり、人口の一定割合が実際に感染を経験しないと集団免疫に到達できないことは明らかなようである。防御から共存へとコロナ局面がシフトしつつある今、(以前も書いたが)コロナが終わった時にマスクを外せるのではなくて、マスクを外した時にコロナが終わるのである。私たちの仮想敵はもはやウイルスではなく、「同調圧力」に対する内なる恐怖心との戦いへと変化しつつある。

同調圧力が有効に働く限り、相当数の人々が一斉にマスクを外す決意を固めるまで街からマスクが消えることはない。その意味で、一億総マスク社会は強固な安定状態にある。逆に、いったん変化が始まればあとは雪崩を打ったように様相が変わるだろう。0℃を越えるとき氷が一気に水へ融けるように、大規模な相転移が起こるに違いない。カタールのワールドカップは、一面に張った氷が解け始める最初の一滴になるかもしれない、と中継を観戦しながらふと思った。

共通テーマ:日記・雑感