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スパイ気球? [政治・経済]

アメリカ本土上空を不審な気球が航行中だそうである。米国国防省は気球を中国由来の飛来物と即座に断定し、周辺領域に飛行制限がかけられた上に、撃墜まで検討したとういことだ。撃墜はさすがに思いとどまったようだが、一連の騒ぎっぷりに思わず笑ってしまった(が、結局撃墜したらしい。2月5日追記)。

公然と中国を名指しするくらいだから、米国政府はそれなりの根拠はつかんでいたのだろう。中国政府は結局気球が自国のものと認めたが、偵察目的との疑惑は退けた。いろいろ謎めいた話ではあるが、軍事施設のあるモンタナ州上空を狙ったという憶測は今一つ筋が通らない。仮に中国大陸で放球されたとして、偏西風はしばしば激しく蛇行するし、捕まる高度次第で風向きはブレる。運よく太平洋を越えて北米にたどり着いたとしても、狙った軍事施設付近にぴたりと流れ着く保証は全くない。

気球の写真を見る限り、巡航ミサイルのように自力で航路を誘導する動力があるとは思えない。台風並みの強風が常時吹き荒れるジェット気流の中で、巨大バルーンに吊るされた装置をドローンさながら自在に制御するのはちょっと想像しづらい。飛行精度の観点では、太平洋戦争中に日本軍が揚げていた風船爆弾と五十歩百歩ではないか。そもそも、既に高性能のスパイ衛星を実用化しているはずの国が、ローテクで悪目立ちする高高度気球でアメリカの機密情報を収集しようとする動機が見えない。衛星より低高度で撮像の解像度を稼げるので、ダメもとでたくさん飛ばして数撃ちゃ当たるとたかを括っているのか?それとも、中国が言うように単なる気象観測気球が迷子になったに過ぎないのか?

norimono_character4_kikyuu.png3年前、日本の東北地方上空にやはり謎の気球が姿を見せた(当時ブログで分析した)。白い球状のバルーンと正体不明の吊下物、そして民間機の巡航高度を優に上回る高高度といい、モンタナの気球と共通点が多い。真相はさておき、今回の一件でひとつ明らかになったのは、正体不詳の飛翔体が領空に現れたときの初動体制が日米でかくも違うのか、ということである。アメリカは即座に警戒態勢を発動し、撃墜まで検討した。些かやりすぎ感は否めないとは言え、米国の揺さぶりは少なくとも中国から事態釈明を引き出す効果はあった。

一方、当時の日本政府は不審な気球に何ら反応を示さず、まして撃ち落とすなど頭をよぎりもしなかった。結果的に害はなかったが、政府自ら真相解明を引き出す外交的駆け引きの意欲すらないと証明したことになる。折しも防衛費の引き上げやその財源問題が議論を呼んでいるが、ハード面の整備以前に隙だらけの外交メンタルをまず見直した方が良さそうである。

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