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おならで進む [科学・技術]

ISS滞在中の前澤友作さんが、宇宙に関する質問をツイッターで募っているそうである。そのなかに「オナラをしたら前に進みますか」という疑問が相次いでいるらしい。いい質問である。

space_rocket.png答えはもちろんYesだ。ただしあくまで理屈の上での話で、まともな推進速度が出るかどうかは別の問題である。軽く計算してみよう。ロケットが推進剤を後方に放出する反動で前に飛んでいくのと、原理は同じだ。オナラの噴出速度は一定と仮定し運動量保存則を静止状態から時間積分すると、前に進む速さVは
V = u ln [M/(M-m)]
のようになる(lnは自然対数)。ここでMはご本人の(放屁前の)質量、mは放出されたオナラの質量、uはオナラの放出速度である。本来はロケットの推進力を求める式で、ロケット方程式またはツィオルコフスキーの公式と呼ばれる。

オナラの噴出速度はおよそ秒速3m、一日に放出される量はふつう0.5リットルほどだそうである(参考サイト)。人は一日に平均14回屁をいたすそうで、一回分は0.5リットルの14分の1だが、効果を高めるため一日我慢して一気に放出して頂くことにする。おならの平均分子量をふつうの空気と同じ程度とすると、室温1気圧で0.5リットルは質量にして0.6gほどである。体重70kgの人の場合、オナラで得られる推力は速度にして
V = 3 ln [70/(70-0.0006)] (m/s) = 0.026 mm/s
ということになる。秒速約0.03ミリメートルと言われても想像が及ばない。とてつもなく腸内環境を活性化させて超高速のオナラをぶっ放せば10倍くらい稼げるかも知れないが、それでも秒速1mmは遠い。カタツムリの移動速度が秒速数ミリだそうで、とても及ばない。無重力下で前に進むには、オナラの推進力に期待するよりは普通に壁でも蹴るほうがよほど早そうである。わざわざ計算するまでもなかったか。

ちなみにオナラは水素やメタンなど可燃性ガスを含んでおり、宇宙船内での不用意な放屁は大災害を誘引する恐れがあるという話もある(参考サイト)。実験するのも命懸けだ。

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