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大阪と東京の感染動向について [社会]

一口に第4波と言われるが、大阪と東京ではかなり実態がちがう。大阪は3月初旬まで日ごとの新規感染者が100人未満までいったん落ち着いていたが、3月中旬から急速に拡大し4月半ばには1,200人程度に達し、その後その前後の数値で推移している。一方東京では、新規感染者300人前後の「下げ止まり」状態をしばらく経たあと、徐々に上昇を続けて1,000人をやや上回ったところだ。

COVID_Jan-Apr2021.png数字だけ聞くと状況は一見似たりよったりが、グラフを見れば違いが一目瞭然である。日経新聞が集計したデータを見てみよう。2月末日をもって2回めの緊急事態宣言が明けた大阪の新規感染者数は、ひと月を経た4月頭には年始のピーク約600人を軽々と超えた。東京は3週間遅れて3月21日まで(前回の)緊急事態宣言が続いたが、宣言明け以降の感染者増加率は大阪に比べるとかなり緩やかである。1,000人を超えたと騒がれているが、東京は正月明けに2,500人を超えていたので、4月中旬に年始ピークの2倍(1,200人)を記録した大阪に比べればだいぶ穏やかである。

東京も3週間遅れで大阪と同じ道を追いかける、という予測をメディアで散々聞かされた。たしかに、東京の新規感染者数はじわじわ増え続けている。だが、宣言明けからひと月で6倍以上(100人未満から600人)に急拡大した大阪に比べ、東京は3月下旬から4月下旬の一ヶ月で3倍程度(300人から1000人)である。実効再生産数を見ると、一時は2近くに届いた大阪に対し、3月以降の東京はおおむね1から1.1の前後を推移し、そこから急加速する兆候を示していない。少なくとも現時点のデータを見る限り、東京は大阪の轍を踏むという見立てはハズれたようである。

緊急事態宣言やまんぼうには2つ効能があって、時短や休業要請で感染経路を経つ直接的な効果への期待と、同調圧力で真綿で首を絞めるように行動抑制を促す心理的な効果がある。前者については一定の効果は上げているかも知れないが、万全の対策を取っている飲食店等の苦境を街角で眼にするたび心が痛む。後者は「コロナ疲れ」で効き目が薄れていると言われるものの、何だかんだ日本社会はまじめだ。3月は大阪が宣言をイチ抜けしたあと感染者が増えていく状況を東京はずっと見ていて、なんかヤバそうだという雰囲気はじわりと伝わっていた。それが送別会と花見シーズンの浮かれムードに水を差し、東京で宣言が解除された後も感染拡大が鈍いまま抑えられてきた、という憶測も成り立つ。

とは言えGWではっちゃければ感染がぶり返すので、政府にしては珍しく先手を打ち、3回目の緊急事態宣言をさっさと一部都府県に発令した。総理や都知事の呼びかけは、相変わらず校長先生が朝礼で聞き飽きた訓話を垂れているようで、あまり心に響かない。その代わり、テレビの報道番組が街角を徘徊する若者や旅行に出かける人々を連日のように追いかけ、メディアが頼まれもしない自粛警察を買って出ている気配がある。感染の縮小や拡大に何が一番効いているかと言えば、大抵の国ではロックダウンのオン・オフなのかもしれないが、日本の場合は社会にぼんやり漂う「空気」の風向き次第の気がする。空気を醸成する主体も責任の所在も曖昧だが、それ以外に東京のビミョーな感染動向を説明する要素が見当たらない。経済的・心理的に持続可能な程度に緩みない雰囲気を持ち込む「風」が吹けば、それがたぶん一番無難で効果的なコロナ対策になりそうである。

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