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火星某所にて [フィクション]

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「こんにちは。君はだれ?」
「うわっ、びっくりした。こんなところで人に出会うと思ってなかった。」
「そう?ぼくはあちこちの星で変テコな人たちに会ってきたよ。君は面白い姿をしてるね。」
「火星探査機なんて、だいたいこんな見てくれだよ。あちこちの星って、君はどこから来たんだい?こんな辺境で、ずいぶんオシャレな格好して。」
「ぼくは地球から故郷の星に帰る途中さ。ヘビに噛まれた足が腫れて痛くてさ、ちょっとここで一休みしようと思って。君はここに不時着したのかい?」
「不時着?いやいや、現地調査でわざわざ来たのさ。迷子で困ってるように見えたかい?」
「いや、アフリカの砂漠で壊れた飛行機に八つ当たりする人に会ったばかりでね。ここも似たような景色だし・・・。調査って、何を探してるの?」
「土や石ころを集めているんだよ。ずっと昔この辺りに海や川があって、小さな生き物が棲んでたかもって話があってさ。その痕跡を見つけたいんだ。」
「へえ。でも、昔ってことは今は誰も住んでいないんだね。君はひとりぼっちなの?」
「まあね、仕事だからさ。でも、こうやって集めたものを地球に持ち帰るために、そのうち仲間が回収に来るよ。5年後くらいかな。」
「5年後?さっき誰か降りてくるの見たけど。」
「ああ、それは中国の探査機だね。そいつは、別に知り合いじゃないよ。」
「ははぁ、ケンカしたんだね?」
「え?ケンカっていうか・・・。」
「いやいや、わかるよ。ぼくも故郷でちょっとモメてさ。大切にしていたバラの花があるんだけど、彼女いつもツンとして、要求ばっかりで。なんか居づらくなって、飛び出してきちゃったんだ。」
「花とケンカしたの?ま、モメてると言えば、確かにアメリカと中国はいま経済や安全保障で緊張が高まってるけど。」
「君、急に大人みたいな口のきき方するね。あのね、ぼくはいま後悔してるんだ、バラの本当の気持ちに気付いてあげられなくて、独り置いてきぼりにしてしまったから。君のチューゴクだって、ツンとしてても本心はわからないよ。」
「話が見えないんだけど・・・。ま、どちらにせよ科学と政治は別だから、持ち帰ったサンプルは国を問わず世界の研究者が分析するんじゃないかな。」
「難しくてわからないよ。ブンセキって何だい?」
「見た目は単なる石ころでも、目に見えないくらい小さな生き物の痕跡を、あの手この手で探し出すってことさ。」
「ああ!それならわかるよ。一番だいじなものは目に見えないって、キツネが教えてくれたし。」
「キツネ?君の言うことって、ほんと突拍子ないね。さて、そろそろ仕事に戻らないと。じゃあ・・・」
「你好!」
「うわ、またびっくりした。何でみんな急に出て来るの。」
「我推測 星之王子様?我読了 仏蘭西的童話。」
「君、もしかして中国の探査機?」
「是!你 米国探査機?米国火星探査有長大歴史!你 大先輩。我見倣 米国的探査方式。」
「仲直りできそうで、よかったね。ぼくも故郷のバラがいっそう恋しくなったよ。じゃ、またね。」
「え?ちょっと。あ、行っちゃった・・・。えっと、君、そんなじっと見つめないでよ。わかったよ、じゃあ仕事始めようか。まずアームを伸ばして、ここの地面をそっと掘り起こして・・・」

お断り)文中の漢語はもちろん私の勝手な創作であって、文法も語彙も全く体を成していません。お許し下さい。

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