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オンタイム・オンライン [社会]

cafe_coffee_cup.png国際会議ではたいてい開始時間の15分前くらいには参加者が集まって来ていて、コーヒーを片手にそこかしこで立ち話に花が咲く。雑談とは言え、重要な情報交換が行われることも珍しくない。または全然重要ではないが興味深い話(つまりゴシップ)が密かに拡散する。

コロナ禍であらゆる会議がオンライン化され、そんな会議前の貴重な情報収集の機会が失われてしまった。もちろん、本当に必要に迫られれば個人的にメールを出せばよいのだが、話のついでに「あ、そう言えば」と飛び出す何気ない話題が、後から考えるとじつは大事だったということもある。ZoomやTeamsやWebExでは立ち話が出来ない。スパチャ(SpatialChat)のように立食パーティー仕様の会話ができるツールもいくつか存在するが、コーヒーブレイクのたびにわざわざ別の有料ツールに切り替えるのは敷居が高い。

気心知れた仲間同士で行う少人数の会議なら、開始前にZoom画面で雑談に盛り上がることもある。しかしある程度規模の大きいミーティングでそれをやると、他愛ない与太話をマイク越しに会場の隅々まで響かせるに等しい。これは気まずいので、オンライン会議の開始前はたいていとても静かだ。対面会議のように15分前にやって来ても手持ち無沙汰なので、ほとんどの人は会議が始まる直前に集まる。どのくらい「直前」が相応しいかについて、暗黙の合意が形成されつつあるものの、その落とし所に意外な文化的差異がある気がしている。

日本人は真面目なので、5分くらい前からサインインして辛抱強く開始を待つ人も多い。一方私の経験の範囲では、アメリカ人が主体の会議に参加すると、なぜか本当に直前までほとんど誰も入ってこない。5分も前につなごうものなら、ほぼ間違いなく主催者ほか数人くらいしかいない(そもそも会議が開始されていないこともある)。時間を間違えたかと不安になる開始1分前か30秒前、申し合わせたかのように参加者がどっと押し寄せる。突然目の前で花の大輪が開くように、無数の名前がスクリーン一面を次々と埋め尽くす。

よほどぎりぎりまで別件がある人を除けば、PCの前で(たぶんメール処理でもしつつ)わざわざタイミングを図っているとしか思えない。どうせ待つなら先にログインし放置していてもいいはずだが、なぜ入ってこないのか?早めに入り過ぎて見知らぬ人と二人きりになったとき、当たり障りのない会話を交わす手間が億劫なのか?居合わせた他人となるべく目を合わせない日本と違い、偶然乗り合わせた誰かと見境なく交流する米国文化のオープンさが、逆に心理的な足枷になっているのか?

そんなことをいつかアメリカ人に訊いてみたい気がする。が、わざわざメールするほどの話でもないから、会議前のコーヒーブレイクで話題にするくらいが丁度いい。

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