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水際対策の科学 [科学・技術]

chakuriku_airplane.png岸田総理がコロナ水際対策のさらなる緩和を予告した。すでに留学生やビジネス目的の入国者について制限の撤廃が始まっており、丸一年間本国で足止めを食らっていた私の研究室の留学生(以前書いた)もようやく先月入国を果たすことができた。一方、観光目的の外国人は今なお日本への入国を許されていない。これが今後段階的に緩和されていくようである。

もっか日本政府が観光客とビジネス関係者を区別するしくみは、入国者の行動・健康管理に責任を持つ国内組織があるかどうかである(留学生の場合はもちろん在籍する大学等が該当する)。入国許可を申請するには、受け入れ組織はそれなりに面倒な書類決済を引き受けないといけない。だから学会参加のため海外研究者が来日したいと思っても、ホスト機関が特別な労を取って許可を取り付けてくれない限り、制度上は「観光目的」となり実現は難しい。

欧米諸国の多くは、観光客を含め往来を原則解禁している。アメリカの場合、出発前一日以内の陰性証明が必須で、さらに外国人は原則ワクチン接種済みが要件となるが、これをクリアすれば観光客も自由に入れる。ヨーロッパでは、ワクチン完了者にはウイルス検査を求めないのが標準になりつつあるようだ。日本はひと手間多くて、出発72時間以内の陰性証明に加え日本到着時の空港内でさらに検査がある。検査結果待ちの列が停滞するとかなり長時間空港で足止めされるケースもあり、経験者には評判が悪いようである。この入国時検査が近く廃止されるのではないかと勝手に予想(期待)している。

理屈の上では、日本国内の感染率(人口当たり新規感染者数)より入国者の感染率のほうが低ければ、海外から持ち込まれるウイルスが日本の感染状況を悪化させるとは考えにくい。具体的には、Σ(入国者数の国別比率)×(各国の平均感染率)×(ワクチンのブレイクスルー率 and/or 入国前検査の見逃し率)のような数値を国内の市中感染率と比較すれば良さそうだ。直近のデータでは、英国や米国の感染率は日本国内の数値とほとんど変わらない(アメリカは2月中旬くらいからずっと日本の数値を下回っていた)。フランスやドイツなどはまだ人口当たりの感染者数が日本の数倍ほどあるので、入国者にワクチンないし事前検査の義務を課す措置は当面は継続せざるを得ないだろうか。

ゼロコロナ政策がまともな解決をもたらさないことは、上海のロックダウンが証明している。ウイルスは必ず入ってくることを前提に、水際でどの程度の「水漏れ」を許容するかという計算が必要だ。感染状況は日々増減するので継続的なモニタリングは必要だが、せっかく正常化に向かう決心をしたついでに政府はそのくらいのデータ分析はやっても損はなかろう。

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