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番外編:新しい生活様式? [社会]

コロナ後の新しい生活様式なるものが提示された。過去数ヶ月で言われ続けたことの集大成なので、内容自体は想像の範囲内だが、これを「新しい」生活と呼ぶセンスの悪さがすごい。

5月4日付専門家会議提言書(PDF)の9ページに「新しい生活様式」の実践例というリストが載っている。実践「例」だから、すべての項目を一つ残らず強制する意図はないものと想像する。とは言え《料理に集中、おしゃべりは控えめに》とか、刑務所なみに規律が厳しい。これ美味しいね、とかつぶやいた途端に自粛警察が飛んできて罵詈雑言を浴びせられるのか。そんな日々が「新しい生活様式」だと決めつけられると、せっかく見え始めた一抹の希望に蓋をされるようで息が詰まる。

overshoot_model.png疫学の数理モデルによると、規制が強すぎても弱すぎても結局オーバーシュートするリスクがある(オーバーシュートの本来の意味についてはこちら)。強い対策を取れば第1波は無事やり過ごせるが、免疫獲得の広がりが遅くなるので却って無防備なまま第2波を迎える脆弱性が残るのだ。将来ワクチンが普及するまでは、医療崩壊を起こさない範囲で緩やかな感染を許容していくことが、オーバーシュート(=本来は防ぎ得る過剰な感染)をむしろ抑える。感染拡大を断固阻止するのではなく、上手に制御するわけだ。状況を注意深く分析しつつオンとオフを使い分ける社会戦略が、結果的には新型肺炎の犠牲者を最小限に抑えることにつながる。

温もりある社会と科学の知見が両立する合理的な接点を追及する。それが本来あるべき「新しい生活様式」ではないか。

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