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COVID-19自由研究その5 [科学・技術]

最近ようやく、各局ニュースでも感染者の増加ペースが鈍りつつある事実が認知されるようになった。まずは、先々週先週に引き続き感染拡大率の最新状況を確認したい。厚労省のデータを使いやすいCSVデータに集約して下さる東洋経済オンラインに改めて感謝申し上げる。

COVID19-growthJpn0501.pngこれまで同様に感染拡大率(日毎の新規感染者数÷総感染者数)を見ると、5月1日現在2%を切った。過去2ヶ月の最低水準を日々更新しており、感染拡大鈍化は明白だ。今回新たに、実効感染拡大率として感染者から退院者を差し引いた値(=(日毎の新規感染者数ー退院者数)÷(総感染者数ー総退院者数))を重ねて描いてみた(青色の曲線)。これが患者の回復を加味した現実の感染者数の推移を見る目安とすれば、5月に入り僅かながらついに0%を切った。日々揺り戻しはあるが、大勢としてはピークアウトしたことになる。

COVID19-positiveJpnTyo.pngあわせて全国の陽性率(陽性者数÷PCR検査人数、右図の上)の推移も見ておきたい。各日から一週間遡った週間累積値で評価する(週末と平日間の凸凹を緩和する効果と検査実施から陽性判定までの時間差を吸収する効果がある)。3月下旬から4月中旬にかけて、検査人数(棒グラフ)が増えているにもかかわらず陽性率(線グラフ)もじりじり上昇している。陽性率の上昇は、クラスター追跡中心の検査が症状ベース(経路不明の疑い患者)の検査にシフトしつつある実情を見ている側面もあるかも知れない。感染鈍化に呼応して4月中旬頃から陽性率は下がり続け、およそ7%程度にまで落ちてきた。検査人数自体はこの2週間のあいだ頭打ちだが概ね一定水準を保っているので、少なくとも検査数が落ち込んで陽性者が減って見えているというわけではなさそうだ。なお東京に限ると陽性率が60%を超えた瞬間もあり、検査の逼迫状況が推察されるが、現在は30%弱まで戻っている(下図)。慶応大学病院が院内で実施したPCR検査陽性率とナビタスクリニックが調査した抗体保有率はいずれも約6%で、限られた統計だがこれを都内の感染実態の暫定的な目安とすれば、30%はその5倍もの数値だ。PCR検査はもともと無作為抽出を指向していないとはいえ、検査対象のサンプリングがかなり偏っている証左である。

さて、ピークアウトということは折り返し地点をようやく越したわけで、感染者はまだまだ多いのでいきなり元の生活に戻ることはできない。だが、ヨーロッパの一部の国々のように段階的な制限緩和を考えて良い時期である。もうしばらく緊急事態宣言を継続しつつ、その枠組の中で各種自粛要請を感染リスクの低い業種から少しずつ外していく準備を始めるべきではないか。専門家会議はそんな提言も匂わせたが、今まで政府から出た話は宣言の継続か解除かという1か0の選択肢ばかりで、その間をつなぐ具体的戦略がほとんど聞こえてこない。足取りは亀の歩みであっても、状況は良くなりつつあるという未来志向のメッセージがほしい。どんなに微かであれ、トンネルの先に見える一条の光だけを心の支えに暮らしをつないでいる人たちが、今どれだけいることか。

*5月2日追記:最後の図(東京の陽性率)に一部誤りがあったので修正した。
*5月4日追記:慶大病院が実施したPCR検査を抗体検査と誤って記述していたので修正した。

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