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愚者の宴 賢者の集い [社会]

medical_koutai_breakthrough_woman.pngドイツでコロナ感染状況が急激に悪化しているそうである。新規感染者数のみならず、病院の逼迫状況も懸念が増しているというから穏やかではない。重症化する患者の多くはワクチン未接種者ということである。接種から月日を経た高齢者もブレイクスルー感染で重症化するリスクが増す恐れはあるが、ブースター(3回目)接種で回避できる。しかし自らの意思でワクチンを打たない未接種者たちを通して広がる感染は、彼らが決心を変えない限り状況は好転しない。だがそもそも人からとやかく言われるのが嫌いなタチな人もいるので、批判されればされるほど頑なに拒否し続ける。

ドイツの接種完了率は7割弱とのことだ。日本は7割と8割のあいだなのでドイツより接種が進んでいるが、それほど差が開いているわけではない。第6波が来ると脅され続けながら一向にその気配のない日本は、何がそんなに違うのか。マスク率の高さは間違いなく感染抑止に効いているだろう。でもそれだけだろうか?とくに根拠があるわけではないが、別の仮説を一つ考えてみたい。

もともと、人口の6-7割が抗体を獲得すれば集団免疫に達すると言われていた。ブレイクスルー感染のおかげでそのハードルは上がったが、今の日本はあたかも社会が集団免疫を得たかのような落ち着きを見せている。むしろ、接種が進んでいる欧州諸国で一向に感染収束の傾向が見えてこないことの方が、疫学の数理に反する。

ワクチン接種者と未接種者は、必ずしも社会に均等に散らばっているわけではない。世代や嗜好の似た者同士は集まりやすい。ワクチン嫌いの人同士は何となく感性が合って話も弾むかも知れない。仮に社会全体で7割が接種を終えていても、未接種者ばかりが集まってパーティーで盛り上がれば、その空間(仮に「愚者の宴」と呼んでおく)はワクチン開始以前並みに無防備だ。社会の内部構造が非一様なサブネットワークでつながっている限り、仮に社会全体が数値の上で集団免疫を獲得したとしても、一定の範囲で感染拡大は続く。「社会のブレイクスルー感染」が起きているのである。

接種者と非接種者の心理的な分断が深ければ深いほど、両者が交わる機会は少ないので社会のブレイクスルー感染はなかなか止まらないだろう。一方、接種者と非接種者の垣根が低い社会では、人が集まれば非接種者の合間に自ずと接種者が混じり、感染の連鎖が断ち切られる。そんな「賢者の集い」が愚者の宴より当たり前に実現する社会では、集団免疫は理論値に近い水準で実現するだろう。意見の違いを侃々諤々ぶつけ合うより黙して和を重んじる日本社会は、ワクチンの見解が異なる者同士が自然に混じり合う状況が実現しやすいのではないだろうか。

ソリの合わない人と無理やり仲良くなる必要はないけれども、個をぶつけ合ってそっぽを向くよりは、深追いせずに黙って様子をうかがい合う。日本社会は、感染症に対し耐性の強い文化的要素をもともと内包していたような気がしてならない。

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