SSブログ

今日も最高値 [科学・技術]

space_nissyoku.png皆既日食をご覧になったことはあるだろうか?私はオーロラと皆既日食は死ぬまでに一度この目で見てみたいのだが、どちらもまだ実現していない。次に日本で観測される皆既日食は2035年だそうで、めったに拝めない希少な天体ショーというイメージがあるのではないか。だが実際には、世界のどこかではほぼ毎年のように皆既日食が出現している。ただ地球の表面は7割がた海に覆われているし、陸上もその大半はジャングルや砂漠など人が簡単にアクセスできない無人の大地である。たまたま人間の生活圏を皆既日食が通過するとその時だけにわかに盛り上がるので、結果的に稀なイベントという印象を醸成するのだ。

豪雨などの際に気象庁から出される大雨特別警報というものがあって、数十年に一度の降雨量という物々しい警句が飛び交う。しかしこれを年に何回も聞かされると、全然「数十年に一度」ではないじゃないか、と訝しく思う方も多いのではと思う。真意はと言うと「そこの地域が」数十年に一度経験する災害のことであって、「全国のどこかに」豪雨が襲う頻度のことではない(特別警報の発令基準は気象庁サイトに詳しい)。皆既日食の例と裏返しで、ニュースを見ていると数十年に一度クラスの集中豪雨が年がら年中降っているように錯覚するが、自分の住んでいる街で特別警報クラスの気象災害に遭遇する確率は、多くても一生に一度か二度くらいのはずだ。

日々報道されるコロナ感染者数の取り上げ方に、似たようなデータ解釈の混乱を感じる。東京都で最高値を更新しましたとか、今日は広島県で過去最多でしたとか、記録を更新した都道府県を入れ代わり立ち代わり取り上げると、全国規模で日々一方的に感染者が増加し続けている印象を与える。どこにも過去最多が見当たらない日は、「過去3番目の数値」とか「総計で○万人を突破」などとあの手この手で煽るメディアもある。毎日のように最多最多と聞かされると、明日は日本も感染爆発かと不安になる人もいるかも知れない。冬本番を迎え夏場より感染リスクが高いのは当たり前だが、北海道で第三波が縮小に向かいつつあるほか、近畿や中部地方などで12月に入り感染拡大の伸び率が11月より鈍化した地域も多い。じりじりと新規陽性者数が増え続ける首都圏や一部の県と何が違うのか、データを注意深く読み解けば何かヒントがありそうである。

メディアのコロナ報道はともすればヒステリックになりがちだが、逆に首相周辺は呑気に忘年会でステーキを召し上がっておられるようで、このギャップはいったい何だろう。その真ん中へんが本来あるべき立ち位置ではないか。為政者の決断力が鈍いと対策が回らないし、メディアが煽り続けるとオオカミ少年と同じで国民のメンタルが擦り減りむしろ逆効果だ。勝負の3週間とやらが不発に終わったのも、別に不思議ではない。医療が逼迫し予断を許さないならなおさら、データを読むときはグラフの最高峰ばかり指差し狼が来たと大騒ぎするのでなく、ちゃんと全体を見渡し落ち着いて分析をしよう。

共通テーマ:日記・雑感