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芸能人の離婚案件 [社会]

rikon_todoke.pngコロナとオリンピックの陰で地味に流通しているニュースの一つが、大物芸能人に相次いだ熟年離婚である。とくに世間を驚かせたのが、鈴木保奈美さんと石橋貴明さん、篠原涼子さんと市村正親さんの二組だ。どちらも円満な協議離婚ということだが、芸能ニュースの受け止め方にはかなり温度差があるようである。

鈴木保奈美さんは子育てが一段落し、亭主関白で妻の女優活動にあまりいい顔をしない(とされる)石橋さんを見限った、というシナリオが通説だ。一方、篠原涼子さんはお子さんたちがまだ独立には早い年頃で、親権が市村さんに委ねられたことから、母親より女優業を選ぶのかと批判する向きもあった(もし男女の立場が逆だったら、父親より俳優業を取るのかと非難する声はほとんど出ないだろう)。風向きが不穏だと思っていたら案の定、芸能メディアは韓流スターとの関係とかあれこれ掘り起こし、篠原さんを叩き始めた。鈴木さんはOK路線で篠原さんはNG案件、と仕分けすることに決めたようである。

メディア相手の情報戦の中で、鈴木保奈美さんの出方は鮮やかだった。束縛の強い夫から放たれる構図を醸成しつつ石橋さんと仕事上の関係は続くと強調することで、ダメージを最小限に抑えた頃合いが見事である。篠原さんと市村さんの方は、歳の離れた夫が醸し出す大人の余裕を印象付けて円満演出を試みたが、これが却って篠原さんを悪役に仕立てている感もある。芸能メディアは、夫が立派なのだから離婚は妻のせいだ、というシンプルな二元論で整理してしまいたいのである。

誰かが離婚するとその原因があれこれ詮索されるが、つまるところ単に夫婦を続ける理由がないだけの場合もある。もともと赤の他人どうしだった二人が、ひとつ屋根の下で何十年も暮らすのである。お伽噺のように「二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」を実現するのは、並大抵のことではない。ほとんど喧嘩もせず老後まで仲睦まじく寄り添う夫婦がいる一方、単に離婚に踏み切るのが億劫で持ち堪えているケースも珍しくはない。仲が冷えても最後は同志に立ち返って共感し合える余地があれば良いが、共感回路が完全に焼き切れると夫婦間はただ敵対する場となり、もはや関係悪化を止めることはできない。

引き合う2本の棒磁石の向きを変えると逆に跳ね返るように、夫婦間の引力が斥力に変わる局面がある。その瞬間は、子供の養育や経済的自立のような目に見える問題と違って、他人が窺い知ることは難しい。どちらがN極か書かれていない棒磁石の動きを観察するようなものだ。他人どころか、当事者にも磁極の反転が見えていないことがよくある。石橋さんや市村さんにも言い分があるに違いないが、もしかすると妻の本気度に気付くのが少し遅すぎたのかも知れない。

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