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線状降水帯その2 [科学・技術]

job_otenki_oneesan.png気象庁がこの6月から線状降水帯の予測を始めた。気象災害の軽減は気象庁の大事なミッションであるし、従来から記録的短時間大雨情報とか大雨特別警報とか、激甚災害へ警戒を呼び掛けるためいろいろな手を打っている。数値予報技術は日進月歩で向上しているので、満を持して線状降水帯予測をルーチン化したということだと思う。ただ線状降水帯という名称を持ち出したのは、ある意味賭けに出たなと思う。

そもそも線状降水帯って何だろう、という話は以前書いた(ここ)。顕著な水蒸気収束に伴い激しい降水が継続的に形成されることが特徴である。激しい雨が同じ場所で持続することが、浸水や洪水など水害リスクを高める。ただ、「線状」という幾何学的定義を表に出したことに少し違和感がある。線状でなくても停滞する降水システムは少なくないし、見事な線状であっても移動速度が早ければ悪さはしない。一昨日埼玉県で発生した豪雨は線状降水帯ではなかったが、局地的にひと月分の倍以上の降水をもたらし浸水被害を出した。

わかりやすい名前を出して耳目を集め、警戒心を喚起したいという意図もあるのかと思う。それはそれで良いが、名前を出した途端に似て非なるものが排除される。停滞する豪雨を予め捉えることが大事なのであって、それが線状降水帯なのかどうかは本質ではない。気象庁の努力と熱意は常日頃から深い敬意を覚えるが、物理的な意味づけが曖昧で国際的には認知されていない学術用語をそこまで主役に据えるべきなのか、相変わらずモヤっとしている。

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