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番外編:社会的距離 [社会]

virus_hanareru_figure1.png社会的距離すなわちソーシャル・ディスタンスとか最近よく聞くが、もともと社会学でsocial distanceといえば社会階層や宗教をまたいで人を隔てる抽象的な距離感のことを指し、飛沫感染を避けるために人と2~3mの間隔を空けましょうという文脈とはだいぶ違う。後者の意味ではsocial distancingというのが正しいそうで、この場合のdistanceは「距離を空ける」という動詞であり、間を保つというアクションに意味の重点がある。

さらにややこしいことに、social distancingという言葉の成り立ちは一見「social distance(=社会的距離)を取ること」のように見えるが、実際は「socialな意味で (=社会的な場で)距離を取ること」である。前者だと社会の分断を拡大させるような妙な意味合いになりかねないので、今ではWHOなどが「physical distancing」を使うよう呼びかけている。感染で問題になるのは物理的な距離の近さであって、困難な時勢にあって人と人を結びつける心理的な距離はむしろ近くていい。

日本語でなんと呼べばいいのだろうか?「物理的距離」では身も蓋もない。「フィジカル・ディスタンシング」ではちょっと舌を噛みそうである。まあ普通に「あいだ空けて」と言えばすみそうだが。

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