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ワイパーごしの世界 [その他]

運転の荒い人が多いと言われる名古屋に住んでいるせいなのかどうか、ウィンカーを出したがらない車によく出くわす。車線変更で白線をまたいでから2発ほどチカチカやるヤツとか、中には一切ウィンカーを出さずに割り込んでくる連中もいる。この手のドライバーはきっと車から降りても、他の通行人にぶつかりそうな勢いでムッツリうろついているのではないか。逆に、合流で先を譲ると丁寧に会釈をしてハザードまで出してくれる人は、出入口のドアなどで鉢合わせしたら必ず笑顔で通路を譲ってくれるような気がする。

car_wiper_ame.pngドライバーの癖が出る車の所作は、他にもたくさんある。実は自分の癖が人とずいぶん違うなと思うことが一つだけあって、それはワイパーのスピードだ。少し雨脚が強くなると、すぐにINT(間欠)からLOに上げたくなるのだが、その時点でまわりを流れる車のワイパーはまだほとんど稼働していない。みんな、ちゃんと前見えているか?

私の車(ホンダFIT)の場合、ワイパーはINT・LO・HIの3段階ある。INTとLOの差が結構大きいので悩ましいのだが、雨粒が視野に溜まってくるととにかく鬱陶しい。雨滴一つ一つは小さいが、フロントガラス上に静止しているから視野の同じ一角を占有し続ける。ワイパーは頻繁に視界を横切るけれども、素早く動いているので雨滴ほど視線をブロックしない。でもこのあたりの感覚が、平均的なドライバーとすこし違うのかも知れない。最近は、雨滴を感知して自動的にワイパースピードを調節する機能が標準装備の車種も多いそうで、必ずしもドライバーの好みで決まっているのではないのかも知れないが。

感覚の違いについては、思い当たる節がないでもない。私はド近眼な上に比較的強い乱視がある。40代も半ばに近づいた頃から老眼も進んできて、長年愛用したコンタクトレンズが不便になったので、数年まえ遠近乱視兼用のメガネに代えた。乱視は、眼球内の屈折率が不均一で焦点が一点だけに決まらない状態である。運転時はもちろんメガネをかけているが、乱視を完璧に矯正するのは多分難しい。そのせいで、雨粒ごしの景色が普通の人より歪んで見えやすいのかもしれない。

一緒に空を見上げる二人が同じ碧色を見ているか確かめる術がないように、自分が見ている世界と他人の目の映る世界がまったく同じである保証はない。雨に濡れるフロントガラスごしの風景も、ドライバーによって少しずつ違う。降り始めの雨の中ひとりワイパーをぶん回していると、たまに同じようにワイパーをフル稼働させる車とすれ違う。運転者の顔を一瞥する間もないほどあっけない一期一会だが、きっと私と限りなく近い世界を見ている数少ない誰かなのだと思うと、つかのま心が繋がるような気がする。

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